鍼灸治療によるストレス軽減②【東洋医学編】

 前回のブログ『鍼灸治療によるストレス軽減①【現代医学編】』では、現代医学の視点から、『ホメオスタシス(恒常性)』が、『自然治癒力』であると述べました。

 では、現代医学の『ホメオスタシス(恒常性)』に相当する東洋医学の自然治癒力は何であるのかというと、『陰陽論』や『五行論』などになります。

 『陰陽論』とは、下記に示すように、相反する『陰』と『陽』が、相互関係を維持することで、自然界のバランスをとっているという考えです。

  【陰】⇒ 下、内、夜、女、老、内側、裏、胸腹、下部、五臓、寒冷、慢性、暗、静、血、津液

  【陽】⇒ 上、外、昼、男、幼、外側、表、脊背、上部、六腑、温熱、急性、明、動、気

 例えば、健全な体温のバランスでは、冷え【陰】過ぎず、かつ熱【陽】すぎず、あるいは、安静【陰】しすぎず、かつ動き【陽】しすぎないことが、健康維持の一つにあげられます。

 また、『五行論』とは、宇宙に存在するあらゆる万物を5つの要素に分類し、これ5つの要素が、お互いに影響しあい関係を保つという考えです。

 下記のように、身体に関係する五臓六腑という言葉があります。これらも、5つに分類されます。

  『五臓』 ⇒ 肝・心・脾・肺・腎

  『六腑』 ⇒ 胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦

 鍼灸治療では、この五臓六腑の臓腑関係が、お互いに良いバランスを保つことで、良好な健康状態を得られると考えます。

 そして、前回のブログ『鍼灸治療によるストレス軽減①【現代医学編】』で述べたように、自律神経(交感神経・副交感神経)をうまく調節することが、治療効果を上げることになります

 鍼灸治療は、『鍼(はり)』の痛みによって、あるいは、『お灸』の熱さ・温かさによって、感覚神経の『痛覚』・『温度覚』に刺激を与えることで、運動神経・自律神経(交感神経・副交感神経)の調節を行なって、良好な身体に、より近づける治療方法です。

 そして、『鍼(はり)』や『お灸』は、副交感神経を優位にし、治癒力を高める作用があります人の身体は、安静時に治癒力が発揮します。安静している時は、自律神経の『副交感神経』が優位の状態です。

 具体例として、『肩こり』をあげてご説明します。

デスクワークなど長時間の作業により、肩甲骨周辺の筋肉に疲労が生じます。この時、肩の状態は、血行不良が生じています。血液(※東洋医学では『血』)は、上記から【陰】に該当しますので、血液が不足した状態であり、【陰】が不足した状態(※東洋医学では【陰虚】と呼びます)です。あるいは、肩が冷される【陰】ことで、血行不良を生じているかもしれません。

 この場合の治療方針は、『血』が不足しているので、【陰】である『血』を補う治療、あるいは冷え【陰】が生じているならば冷え【陰】を押さえ、温かくする(【陽】を補う)治療になります。

 このように、実際に『陰』と『陽』のバランスを意識して、治療に心掛けています。

 また、ストレスによる症状の緩和も同様に、鍼灸治療で改善します。

 長期間、ストレスを持っている方の多くは、心身の状態がイライラ傾向です。人の感情は、『五行論』の五臓(肝・心・脾・肺・腎)で分類すると以下のようになります。

   『肝』⇒『怒』、 『心』⇒『喜』、 『脾』⇒『思』、 『肺』⇒『悲』、 『腎』⇒『恐』

 従って、イライラした状態は、『怒』に当たり、『肝』に影響を与えることになります。よって、治療方針は、『肝』の状態を良好にする治療を行なうことで、改善できることになります。

 東洋医学は、現代医学のように『悪いものを取り除く』などの治療とは異なり、身体の『自然治癒力』を、感覚神経を通して、導き出す治療法です。

鍼灸治療によるストレス軽減①【現代医学編】

 動物は、自分の身を守るために、機敏な反応を必要とします。その結果、身体には、汗をかく、あるいは筋肉や脳・感覚神経に血流を高める方法として血圧を上げるなどの変化を生じさせます。

 また、日常生活でのストレス効果は、肉体的または精神的成長を目的に、『やる気』、『作業効率アップ』といった能力を伸ばすことが出来ます。

 しかし、過度のストレスを受けることで、現代医学では、下記の病名を誘発します。

   風邪 肩こり 胃炎 胃潰瘍 過敏性腸症候群 急性胃腸炎 過呼吸 アトピー性皮膚炎 円形脱毛症 

   アレルギー アルコール依存症 うつ病 過食症 拒食 顔面神経痛 肩こり 虚血性心疾患 首のこり

   血尿 下痢 月経困難症 口内炎 甲状腺機能異常 口臭 高血圧 高血糖症 ほてり 頭痛 子宮筋腫

   湿疹片頭痛 十二指腸潰瘍 自律神経失調症 腰痛 脂肪肝 蕁麻疹(じんましん) 心因性発熱

   心身症 視力低下 自己免疫疾患 耳鳴り 性機能低下 生理不順 喘息 メニエール 多汗症 

   慢性疲労症候群 チック症 手足のしびれ 低体温 糖尿病 のぼせ 吐き気 肌荒れ パニック障害

   冷え性 頻尿 残尿感 不整脈 不眠症 ヘルペス 便秘 夜尿症 など

 過度のストレスとは、外的温度、環境、騒音、薬物、外傷、日常生活の不摂生(栄養不足・過剰摂取・睡眠不足など)、人間関係トラブル、精神不安、怒り、過度の緊張などです。

 現代医学の考えでは、人間は、『(神経系)』・『内分泌系(ホルモン系)』・『免疫系(白血球など)』の3つのシステムのバランスで、健康が維持されています。これを『ホメオスタシス(恒常性)』と呼びます。

 そして、身体に過度のストレスを与えると、下記の影響を受けて、恒常性のバランスが崩れ、体調不安定になります。

  【脳】    ⇒ 交感神経の緊張、情緒不安定、判断力低下など

 【内分泌系】 ⇒ ストレスホルモン(コルチゾールなど)の過剰分泌など

  【免疫系】  ⇒ 免疫力の低下など

 では、ストレス自体(コルチゾールなど)は、身体に悪いものかというとそうではありません。身体の機能を高めるには、不可欠なモノです。血圧を上げたり、ウイルスや細菌から身を守ったり、筋肉の動きの向上などの身体に良い働きをします。『適度なストレス』、『適度のホルモン量』、『適度な免疫力』が重要です。

 このように、現代医学での『ホメオスタシス(恒常性)』が、『自然治癒力』になります。

 また、『自然治癒力』をコントロールするところは、頭部内の『視床下部』であり、『自律神経(交感神経・副交感神経)』を支配しています。

 健康維持には、如何に『自律神経』のバランスを調整することが最も重要になります。

ばね指(弾撥指)の治療法

 現代医学(西洋医学)では、ばね指(弾撥(だんぱつ)指)は、指を曲げる腱(屈筋腱)とその屈筋腱の浮き上がりを押さえる靱帯性腱鞘(けんしょう)の間で炎症が生じることで、さらに症状の悪化に伴い、この靱帯性腱鞘が肥大し、通過障害を起こす状態です。

 病院での治療法は、保存的治療と手術療法になります。

 ばね指(弾撥指)の動作により症状が悪化すると、指を曲げたり、あるいは伸ばす時に痛みが生じます。

 ところで、東洋医学では、不通則痛(痛ぜざればすなわち痛む)という言葉があります。

 この意味は、身体が正常な時は、身体の中では、血液などがスムーズに循環されていますが、身体の循環が悪くなることで、血液などが滞り、その結果『痛み』が発生するという考えです。

 従って、身体の循環を良くすれば、『痛み』が改善されることになります。

 さて、ばね指(弾撥指)の症状で、

      ・起床時に、指の曲げる時あるいは伸ばす時に痛みがある

      ・指の動作開始時痛みが生じるが、動き続けると次第に症状が緩和される

      ・お風呂に入って患部を温めると、症状が緩和される

といった方であれば、鍼灸治療で改善の見込みがあります。但し、症状が出始めてから遅くなるほど、治りにくくなり、あるいは完治に時間が掛かります。

 当院でのばね指(弾撥指)の治療は、主に肩、腕、手の血流の改善と、症状の原因とされる日常生活指導及び自宅での改善方法を行ないます。

 一般に、鍼灸治療では、治療開始が早ければ早いほど、症状が早く改善でき、あるいは治療期間が短縮されます。

 まずは、病気になった時は、『急を要する重篤(じゅうとく)な病気』の判断として病院の受診することが賢明です。病院の診察結果、急を要しなければ、ご本人が納得される病院の治療あるいは病院以外の治療法をじっくり選択されれば良いと思います。

 何よりも、『痛み』や『しびれ』などが身体に生じた場合は、『身体に異常が発生していますよ!』との身体からの信号です。

 『痛み』をガマンするよりは、まず第一に身体の改善を考えるのが得策でしょう。

冷え性治療効果の持続性向上法②【東洋医学編】

 東洋医学の視点から、冷え性予防をご説明致します。

 まずは、東洋医学で、『冷え』に関わる基本的な考え方を述べます。

 『陰』と『陽』の相対することで自然界のバランスが保っているという『陰陽論』という考え方と万物を5つに分けた『五行論』があります。

では、『陰陽論』では、身体に関係する『陰』と『陽』には、下記のことがあげられます。

   『陰』 ⇒ 冷たい・血(≒血液)・津液(≒体液)  

   『陽』 ⇒ 温かい・気

 『陽』の『気』とは、どのようなものであるかは、下記をようにイメージして頂いたらよいと思います。

 血液という液体は、押し出す力がなければ、その場に滞って移動することができませんが、その血液を送り出す力(エネルギー)が『気』に当たります。

 現代医学では、『心臓のポンプの作用』『筋ポンプ作用(静脈血やリンパ液を流す働き)』などがこれに該当します。これは、東洋医学では気の作用の中の『推動作用』です。

 また、冷えに関わる『身体が良い状態』とは、体温が『冷え過ぎ』でもなく『温か過ぎる』でもなく、あるいは体内の水分(体液が)多からず少なからずという状態です。

 一方、『五行論』は、下記のことがあげられます。

    『木』 ⇒ 肝(血液に関わる)・怒・風

    『火』 ⇒ 心(身体全体の制御に関わる)・喜・熱

    『土』 ⇒ 脾(消化吸収に関わる)・思・湿

    『金』 ⇒ 肺(呼吸器に関わる)・憂・燥

    『水』 ⇒ 腎(排泄、水分代謝に関わる)・恐・寒

 従って上記を踏まえて、『陰』と『陽』のバランスを調整し、各々器官の働きを正常に機能させることが、健康増進あるいは症状の回復につながる手段になります。

 では実際に、東洋医学では、『冷え』を解消するには、下記の点に注意を払います。

   ①冷えに関わる『陽』の性質が弱い時は、陽の『気』あるいは血液や体液などの調整を高める

   ②冷えに関わる『陰』の性質が強い時は、『陰』を弱める。『むくみ』などの解消

   ③『心』の機能を高め、『陽』を高める

   ④『肝』の機能を高め、『血(栄養を含んだモノ)』を増やす

   ⑤『脾』の機能を高め、体内の栄養(エネルギー)を増やす

   ⑥『肺』の機能を高め、『気』の働きを高める

   ⑦『腎』の機能を高め、余分な水分を排泄・調節する

   ⑧病気の原因とする『内因(喜・怒・思・悲・憂・驚・恐)』の調節で、『気』や『五臓の機能』を高める

   ⑨   〃    『外因(風・暑・湿・燥・寒・熱などの外気環境)』の調節で、『五臓の機能』を高める。

   ⑩   〃    『不内外因(飲食・飲酒・喫煙・睡眠・過労などの生活環境)』の調節で、『五臓の機能』低下を防ぐ

 以上のように、世間一般的に言われる『規則正しい生活』が、『冷え性』改善になります。

 しかし、生活環境を変えることがなかなか難しい方、若い時よりも身体の回復が遅くなった方、身体を自力(自己免疫)で治すことができづらくなった方などは、体外からの刺激である免疫力をあげる『東洋医学などの治療』等が必要な時期と思われます。

冷え性治療効果の持続性向上法①【現代医学編】

  冷え性の方にとって、夏はエアコンの冷気や冷房によって、冬は寒気によって、一年中、身体か冷やされる環境にあります。

今回は、冷え性を、現代医学(西洋医学)東洋医学の両方の学問から、冷え性予防をご説明致します。

 まずは、現代医学(西洋医学)の解剖学の視点から、身体の仕組みを知ることで、冷え性対策の予防を考えられることができます。

 身体の中で末端に位置する部位は、頭部四肢(手足)の大きく5箇所が上げられます。また、血管には、主に心臓から身体の末端に血液を送る『動脈』と身体の末端から心臓に血液を送る『静脈』があります。

 『動脈』は、肺から取り入れられた酸素が豊富であり、各器官に酸素や栄養を供給します。

一方、『静脈』は、各器官に酸素を供給したモノなので、酸素が『動脈』よりも少なくなっています。また、『静脈』は、身体に不要なもの(老廃物など)を運ぶ作用を持っています。

 生命維持に欠かせない頭部は、万が一、一本の動脈が欠損しても血流が滞らないように、主とする4本の大きな動脈(左右の総頚動脈・左右の椎骨動脈)が栄養を送り、安定した血流を維持しています。

しかし、頭部と違い手足については、主とする太い動脈が1本しか通ってなく、心臓から遠い身体の末端に位置していますので、血流が滞りやすい部位になります。

 また、『筋肉』や『皮下脂肪』の少ないには、熱を発生させる『筋肉』や体温の放熱を抑える『皮下脂肪』が乏しいので、手先や足先が冷やされる構造になっています。

さらに体表近くに動脈が出てくる手首から末端の指先足首から末端の指先は、外気の影響を強く受けます

 従って、『四肢の冷えの予防』は、肘と膝の関節の部分で血液をできる限り冷やさないで手足の末端まで血液を送り届ける環境を整えることになります。

その方法の一つに『アームウォーマー』『レッグウォーマー』が、手足の冷え性予防には有効になります。

『アームウォーマー』は、肘から手首までを覆い、『レッグウォーマー』は膝から足首を覆うことで、外気からからの冷えや体温の放熱抑止の作用が期待できます。

手足の末端が冷える方で、『アームウォーマー』や『レッグウォーマー』を使ったことがない方は、実際に使ってはいかがですか。

尚、東洋医学の視点からの冷え性対策については、ブログ『冷え性治療効果の持続性向上法②【東洋医学編】』をご覧下さい。

現代(西洋)医学と東洋医学の治療効果について

 現代(西洋)医学は、一般に病院での治療を指します。治療内容については、下記のことがあげられます。

   ◇ 悪くなった臓器あるいは組織などを取り除く手術

   ◇ ウイルスや細菌など身体に悪影響を及ぼす状態を薬物により抑制あるいは除去させる治療

   ◇ ガンなどの悪性腫瘍を最新の先端技術により除去若しくは抑制治療

                                           ・・・ など

 一方、東洋医学での治療は、自己の自然治癒力を高めることを目的にしています。いわゆる現代医学の『ホメオスタシス』が正常に働くように調整する治療法になります。

 ちなみに『ホメオスタシス(生体の恒常性)』とは、例えば体温が上がると汗をかいて体温を下げる作用『体温調節』など無意識に身体を正常な状態に安定させる働きなどをいいます。

 人間などの生物は、自分で身体を修復させる働きを持っています。この修復させる能力である自己治癒力を利用して、東洋医学では、身体の中の『血液』や『神経』などに働きかけることで、自然治癒力を高めます。

 一般に、現代(西洋)医学と東洋医学の治療効果のイメージは、以下のように考えて頂くと良いと思います。

   ※ホームページ内の『治療方針』文中の≪病気と免疫力と回復との関係(グラフ)≫を参照

    現代医学 ⇒ 状態が悪くなる状態【右肩下がりの階段】を抑えこれ以上状態が悪くならない【右肩下がりの階段を

              下りない】ようにすることを目的とした治療

    東洋医学 ⇒ 治癒力を上げる作用【右肩上がりの階段】を促進させ、状態を快復させる治療

 このように、身体のマイナス(-)の状態を抑える西洋医学身体のプラス(+)の作用を促進させる東洋医学を有効に活用することで、『カラダの体調管理』がより一層高まることができると思います。

 

美容と健康に携わる裏方の重要な役目、靱帯!

 東洋医学では、健康とは、『陰陽・五行論』などの考えで、『五臓六腑』や『気血津液(≒現代医学では、血液や体液になど)』などのバランスが調和している状態です。

 しかし、人は、生活を送ることで、周囲の環境や身体の衰えの影響より、さまざまな身体の異常が発生します。いわゆる、東洋医学では、『陰陽気血のバランス』が失調した悪化状態です。

 鍼灸では、『五行論』において、美容と健康に関する皮膚や筋肉に関わる主な五臓は、『肝・脾・腎』です。端的に述べるなら、栄養吸収には『脾』、血流に関しては『肝』、潤いには『腎』が関わってきます。

 下記の様に、現代医学の『解剖・生理』を用いて、東洋医学の考えと比較すると、解釈しやすいかも知れません。

 私たちの身体には、骨を中心に筋肉や皮膚などがあることで、人間という生物として立体的に維持されています。

 この身体の形成に必要不可欠なものとして、『靱帯』があります。

 『靱帯』は、「骨と骨」や「身体の組織(皮膚)」などをつなぐ役目を持っています。この『靱帯』が損傷又は劣化すると、身体を一定の体形や健康を損ねるまたはたるみの原因になります。

 巷(ちまた)で色々な病気の原因で挙げられる『歪(ゆが)み』や、美容の面では皮膚やバスト(乳房)などの体形の維持に、『靱帯』が大きく関係しています。

 『靱帯』は、強靭な繊維性結合組織(細胞の集まり)で、主にタンパク質で形成され、栄養血管が極めて乏しく、損傷すると再生は困難で、運動機能障害や体形を崩す原因になります。

 繊維性結合組織は、『密性結合組織』と『粗性結合組織』に分けられます。

    ◇密性結合組織 ⇒ 靱帯や腱を形成します。

    ◇粗性結合組織 ⇒ 器官や上皮を保持します。

 また、これら2つの違いは、3つの成分『膠原繊維』・『細網繊維』・『弾性繊維』の比重によります。

    ▽膠原繊維

        主成分 ⇒ コラーゲンタンパク

        太さ ⇒ 2~12μm

        特徴 ⇒ 引っ張る力に対して強い力を発揮します。

    ▽細網繊維

        主成分 ⇒ 膠原繊維と同じ

        特徴 ⇒ リンパ器官(胸腺、リンパ節、脾臓、骨髄など)に存在

    ▽弾性繊維

        主成分 ⇒ エラスチン(タンパク質) ※減少により『シワ』の原因になります。

        太さ ⇒ 0.2~1μm

        特徴 ⇒ ゴムのように弾性力に富む繊維で、引っ張ると2倍ほど伸びます

            ※皮膚や腱、靱帯、血管壁など伸縮性の必要な器官に多く含まれています。

 では、実際、身体で機能している『靱帯』は、下記の身体の部分で使われています。

    ◇大きな運動器(膝・肘・肩など)の関節部位

        ⇒ 骨と骨を結合し、一定の運動を制限します。

    ◇小さな運動器(目など)の部位 

        ⇒ 筋肉や腱などを結合します。       

    ◇骨盤腔

        ⇒ 鼡径靱帯などにより、下腹部の内臓や器官などの保護や体形維持を行なっています。

    ◇皮膚

        ⇒ 膠原繊維(コラーゲン)を弾性繊維(エラスチン)で束ねて、皮膚の弾力を保たせています

    ◇バスト(乳房) 

        ⇒ 大胸筋、クーパー靱帯、皮膚で支持されています。

 美容面では、『皮膚の弾力性』に大きく関わるのが、弾性繊維の主成分『エラスチン』というタンパク質です。

 エラスチンなどのタンパク質は、睡眠中に再生するといわれてますので、睡眠不足や夜更かしは、皮膚の劣化(皮膚の潤い)に大きく影響を及ぼします。(※東洋医学では、生活などの不摂生は、病気の原因の不内外因に位置づけられます。)

 『靱帯』は、バランスの良い食事を摂り【脾】適度のストレッチ温熱により血行を良くし【肝】栄養を与え【肝・腎】、『靱帯』が伸びすぎないように、身体に充分合った器具服装などで補強し、規則正しい生活【不内外因の改善】が大切です。

 

医療の視点からの脳に対する香りの効果

 私たちの周りでは、食欲増進を目的にスパイスなどを用いて調理したり、身体をリラックスさせるために香りを用いる習慣が取り入れられています。

 また、宗教的な儀式では、お香などが頻繁に用いられています。

 

 歴史上で香りにおいて、古代エジプトでは、クレオパトラが男性を虜にする目的の一つとして香りを用い、近世ヨーロッパでは、当時フランスでは入浴する習慣がなく、ベルサイユ宮殿内の体臭などの軽減に、バラなどの香りを取り入れたといわれています。

 

 臭いのメカニズムについては、以下の通りです。

  ① 気化した臭いの分子を、鼻の中の上部の粘膜『嗅細胞』で感知します。

  ② 感知した臭いの電気信号は、脳神経の嗅神経(感覚神経)を通って、大脳の側頭葉内側の『鉤(こう)』に伝えられます。

  ③ 『臭い』は、『視床』(感覚情報の中継・運動機能調節の補助)を経由しません。

      ※ 痛み、熱さ、冷たさなどの感覚情報は、『視床』を経由して大脳に伝えられます。

     『視床』を経由しない理由としては、動物が生き残るために、即座に危険を脳に伝え、身を守るためといわれています。

④ 臭いの記憶は、『海馬(短期記憶)』を通じて、『大脳』のあちこちに格納されます。

⑤ 頭部の中央に位置している『扁桃体』にも『臭いの記憶』は伝達されます。また、『扁桃体』は、情動と本能行動関わっていて、『視床下部』にも影響を与えます。 

      ※ 情動行動 ⇒ 逃避行動、攻撃行動、すくみ行動、表情の変化、血圧・心拍数・ホルモン分泌の変化、恐怖、怒り、喜びなど

               本能行動 ⇒ 摂食行動、飲水行動、性行動など

        視床下部 ⇒ 頭部の中央に位置し、自律神経(交感神経・副交感神経)・ホルモン分泌本能行動の調節に関わっています。

 

 では、医療的には、『香り』は、どのような効果があるでしょうか?

 東洋医学(中医学)では、『陰陽・五行学説』という考えがあり、身体の中の個々の機能が、均等にバランスが取れていることを健康とし、これに相当するものとして現代医学(西洋医学)では、『ホメオスタシス』と呼ばれる恒常性の維持の理論があります。

 この『ホメオスタシス』とは、脳などの中枢が体温や血液などの体内の環境を調整して、身体の中のバランスを取る機能のことです。

 この身体のバランスを調整している機能が、自律神経系(交感神経・副交感神経)内分泌系(ホルモンの分泌)です。自律神経は、あらゆる内臓の動きを調整し、ホルモンの分泌も同様に身体の維持に関わっています。

 しかし、この調整がうまく働かなくなると、頭痛、めまい、下痢、倦怠感などの身体の不調が現れてきます。

 

 現代医学では、生命に直接影響を及ぼさない疾患は、比較的軽視される傾向にあります。『自覚症状はあるんですが・・・・、病院の検査には異常がありません』というケースを時々耳にします。

 こういう場合の一つの原因として、体内環境の不均衡によるものと考えられます。

 

 自律神経系(交感神経・副交感神経)やホルモンバランスの治療は、発症から時間が経つほど、治りにくく、また生命に危険が及ばないことで、治療することが遅くなり、他の疾患を併発する傾向にあります。

 従って、自律神経系(交感神経・副交感神経)、内分泌系(ホルモン分泌)に対する治療は、比較的長期に渡ってしまいます。

 

 自律神経系、ホルモン系の治療には、東洋医学(はり・お灸・あん摩マッサージ・漢方など)は有効な方法です。

 また、『香り』を用いる方法は、脳へ刺激を与えて改善する疾患には、上記のメカニズム④または⑤から有効と考えられます。

 身体の体調に合った『香り』は、『健康増進』の一つのアイテムになります。

東洋医学の視点からのアンチエイジング

 アンチエイジングとは、加齢していくことを遅らせることを意味します。人間の身体は、年をとるごとに色々と変化し、肌の表面には、シワやシミが現れてきます。

 老化の原因のひとつには、『活性酸素』と言われています。『活性酸素』は、体内の細胞を酸化し破壊し、皮膚のたるみ、癌、動脈硬化などの原因を発生させます。

人間は、呼吸することで一定の『活性酸素』を発生させます。そのほかに、ストレス、紫外線、飲酒、喫煙などが原因でも『活性酸素』を発生させます。

では、東洋医学(中医学)の視点からは、どのように『アンチエイジング』を行なっていくのでしょうか。

『更年』という言葉があります。更年』とは、女は7年、男は8年という人生の周期の時期をいいます。約2千年前に中国で書かれた医学書、黄帝内径(こうていだいけい)に以下のことが掲載されています。

 『女性は7歳でエネルギーが充実しはじめ、14歳ごろに生理が始まり、妊娠可能になり、21歳で身体が充実してきて、28歳でもっとも盛んな時期をむかえ、35歳頃からだんだん下り坂になって48歳で閉経を迎えます。

 男性は、8歳でエネルギーが充実し、16歳で生殖能力をもち、24歳で身体が充実、32歳ごろに最も盛んな頃を迎え、40歳になると下り坂になって、48歳から56歳ごろに生殖能力、エネルギーの衰えが著しくなる』、という考え方です。

 古代と現代との生活環境は、大きく異なりますが、人体の成長の変化は、昔とは大きな差はありません。

 これらについて現代医学では、ホルモンの影響で変化する時期になります。

 約2千年昔に、このようなことが考えられ、数千年に及ぶ患者に接して診察・治療を行った情報を蓄積した学問が、東洋医学です。

 そして、東洋医学(はり・お灸・マッサージ・漢方等)の有用性について、世間で良く流行する単品ダイエットなどのほとんどは、短期的に活用されなくなりますが、数千年経った今でも『鍼(はり)』・『お灸』・『あん摩・マッサージ』・『漢方』が活用されるということは、歴史的視点からも、効果のある治療・予防・健康増進の手段として有効であることが、証明されていると思います。

 

 また、東洋医学(中医学)では、病気は、大きく分けて3つの原因から発症していると考えます。

  ①内因 ⇒ 過度の情志(怒・喜・思・憂・悲・驚・恐)

  ②外因 ⇒ 身体の周囲の環境(風・寒・暑・湿・燥・火)、ウィルス・細菌などの感染性や流行性のモノ

  ③不内外因 ⇒ 過度の生活環境(労働・心労・房事・休息・飲酒・食事・不眠)、外傷、偏食など

 『東洋医学的アンチエイジング』は、病気になる前(病院の検査・診断に該当しない状態)の『未病』の時に行なうことが、老化防止になります。

 

 以上のことを踏まえて、日常性での『東洋医学的アンチエイジング』は、次の事に注意を払うと良いです。

  ①より ⇒ 強いストレスを持たない、あるいはストレスを解消させる生活をする。

        例)身体に負担の掛からない程度の年代に合ったスポーツ・運動、気の合った人との会話、森林浴など。

  ②より ⇒ 周囲の環境に合わせて、周囲の気象条件から身体を守るあるいは予防の体調管理を行なう。

           ※若い時に比べ、身体が変化していることを認識し、その時の年齢に合った健康管理を行なう。

  ③より ⇒ 規則正しい生活、生活環境の見直しを定期的に行なう。

 

 このように、『アンチエイジング』は、日常的に特別なことをしなければ出来ないことではありません。

 仕事や生活、娯楽、スポーツなどに対する義務感や誘惑などを継続的に行なうことで、『自分では治癒できない』あるいは『身体を元の状態に戻しきれない』状態になった時は、外からの刺激による身体のケア(医療的治療・マッサージなど)が必要になります。これを怠ってしまうと、『老化』あるいは『病気の発症』に推移していきます。

  『飲酒』を例にあげて、東洋医学的に説明します。

  お酒を飲みますと、利尿作用が働き、喉が渇いていきます。喉が渇くことで、身体の水分が減ります。水分を欲するので、さらにお酒を飲みます。そして、次第に身体の内部に潤いがなくなり、消化器機能の低下により、五臓六腑の『胃』に熱がたまります。『胃熱』により、皮膚に吹き出物が出やすくなります。また、水分は喉の渇きは潤しますが、吸収した水分は、身体を冷さなければならないところには補充されず、重力の関係で下半身に溜まっていきます。あるいは、飲酒後、睡眠したあとは、顔にむくみが起きます。運動をしない生活を行なっていれば、水分(血液など)の循環が悪くなり、『むくみ』が起こります。手足の『むくみ』は、『冷え性』を生じさせます。

  このような『むくみ』の状態になった場合、鍼灸治療では、『清熱利湿』の治療を行ないます。さらに、当治療院では、生活指導も行ないます。

       ※ 『清熱』 ⇒ 体内の熱を冷ますこと。

       ※ 『利湿』 ⇒ 余分な水分を排出し、胃腸の調整を行い、体内の水分バランスを整えること。

  実際には、『むくみ』の原因は、上記以外の色々な条件を伴って発症します。治療方法も、人それぞれ体格も生活習慣も異なりますので、患者さんに対する治療法も各々変わります。

  体内のホルモンや内臓の調整には、自律神経(交感神経・副交感神経)が非常に関係しています。

鍼灸治療は、『神経(感覚神経・運動神経など)』への刺激より、自律神経などの調整に有効な治療法です。

 

これから寒い季節を迎え、より一層『冷え性』の方を悩ます時期になります。

『お灸』を体験したことがない方は、一度は『温灸』という心地よく温かい『お灸』を試されるとよいです。

温かいお灸『温灸』は、身体の内部を温めて、自律神経の副交感神経を高め、身体の内部の調整を行ない、慢性的な冷え症の改善には、有効な治療方法のひとつです。

日常生活における『心の病』に対する認識と東洋医学での治療方針

昭和初期以前の生活では、現在のような通信技術進歩による情報の拡大、機械の発達による医療技術の進歩の世界とは異なり、迷信や言い伝えなど、目に見えないものが、比較的人々に信じられ、伝えられていました。

 

現代では、目に見えない実体化されないもの、科学的証明できないもの、客観的データが取れないものは、日常生活では、なかなか人々には受け入れ難い世の中になっています。

 

医学界でも、西洋医学は客観的に見える情報を主体に、治療が行なわれますが、東洋医学では、『気』・『経絡』など、現代の科学では証明できないものを含めた思想で、患者さんの症状・生活状況などを考慮しながら治療にあたります。

 

また下記の医学界の時代背景の影響により、社会生活から東洋医学が、次第に認識されなくなった原因の一つでもあります。

 

   ◇      江戸時代まで、東洋医学(鍼灸・按摩・漢方医学)が主体。

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   ◇      江戸時代末期になると、蘭方医学(オランダ(西洋)医学)が次第に普及し始める。

       ※テレビドラマ『JIN-仁』の時代背景がこの頃になり、医学の大きな変化の兆しが出始める時代です。

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   ◇ 明治維新後、政府が西洋医学の導入を基本としたことで、明治中期まで東洋医学が衰退してゆく。

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   ◇ 明治末期に再び、東洋医学が普及し始める。

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   ◇      第二次大戦直後、日本はGHQの占領下に置かれ、鍼灸治療は、非科学的治療ということで、鍼灸は一時施術禁止になる。

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   ◇ 昭和22年「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」が制定。

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   ◇ 昭和26年「あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法」に改正し、現在に至る。

 

ところで、『心の病』は、数値として見えますか?

 

現代医学では、神経伝達物質や体内ホルモンの増減によって、『心の病』を証明していますが、日常生活では、このようなホルモンなどの物質は実際に目に見えるものではないので、『心の病』に理解のない医師、一般社会で『心の病』を経験したことがない方々は、『歳のせいですよ!』あるいは『気のせいですよ!』とおっしゃる場合があると思います。

 

また、病院の検査では何も異常がないという方は、『自律神経失調症』や『更年期障害』などの病名が付く傾向になります。

 

東洋医学では、『病』は、『内因』・『外因』・『不内外因』から起こることを基本として考えています。

 

したがって、病気の原因を探る為の問診では、患者さんの症状は勿論のこと、内因(七情)という過度の感情(怒・喜・思・憂・悲・恐・驚)などを考慮して、診察に当たります。

 

鍼灸を含め、東洋医学は、『心の病』において、症状の度合いにより治療期間は異なりますが、良い効果が得られる治療法です。