鍼灸治療によるストレス軽減②【東洋医学編】

 前回のブログ『鍼灸治療によるストレス軽減①【現代医学編】』では、現代医学の視点から、『ホメオスタシス(恒常性)』が、『自然治癒力』であると述べました。

 では、現代医学の『ホメオスタシス(恒常性)』に相当する東洋医学の自然治癒力は何であるのかというと、『陰陽論』や『五行論』などになります。

 『陰陽論』とは、下記に示すように、相反する『陰』と『陽』が、相互関係を維持することで、自然界のバランスをとっているという考えです。

  【陰】⇒ 下、内、夜、女、老、内側、裏、胸腹、下部、五臓、寒冷、慢性、暗、静、血、津液

  【陽】⇒ 上、外、昼、男、幼、外側、表、脊背、上部、六腑、温熱、急性、明、動、気

 例えば、健全な体温のバランスでは、冷え【陰】過ぎず、かつ熱【陽】すぎず、あるいは、安静【陰】しすぎず、かつ動き【陽】しすぎないことが、健康維持の一つにあげられます。

 また、『五行論』とは、宇宙に存在するあらゆる万物を5つの要素に分類し、これ5つの要素が、お互いに影響しあい関係を保つという考えです。

 下記のように、身体に関係する五臓六腑という言葉があります。これらも、5つに分類されます。

  『五臓』 ⇒ 肝・心・脾・肺・腎

  『六腑』 ⇒ 胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦

 鍼灸治療では、この五臓六腑の臓腑関係が、お互いに良いバランスを保つことで、良好な健康状態を得られると考えます。

 そして、前回のブログ『鍼灸治療によるストレス軽減①【現代医学編】』で述べたように、自律神経(交感神経・副交感神経)をうまく調節することが、治療効果を上げることになります

 鍼灸治療は、『鍼(はり)』の痛みによって、あるいは、『お灸』の熱さ・温かさによって、感覚神経の『痛覚』・『温度覚』に刺激を与えることで、運動神経・自律神経(交感神経・副交感神経)の調節を行なって、良好な身体に、より近づける治療方法です。

 そして、『鍼(はり)』や『お灸』は、副交感神経を優位にし、治癒力を高める作用があります人の身体は、安静時に治癒力が発揮します。安静している時は、自律神経の『副交感神経』が優位の状態です。

 具体例として、『肩こり』をあげてご説明します。

デスクワークなど長時間の作業により、肩甲骨周辺の筋肉に疲労が生じます。この時、肩の状態は、血行不良が生じています。血液(※東洋医学では『血』)は、上記から【陰】に該当しますので、血液が不足した状態であり、【陰】が不足した状態(※東洋医学では【陰虚】と呼びます)です。あるいは、肩が冷される【陰】ことで、血行不良を生じているかもしれません。

 この場合の治療方針は、『血』が不足しているので、【陰】である『血』を補う治療、あるいは冷え【陰】が生じているならば冷え【陰】を押さえ、温かくする(【陽】を補う)治療になります。

 このように、実際に『陰』と『陽』のバランスを意識して、治療に心掛けています。

 また、ストレスによる症状の緩和も同様に、鍼灸治療で改善します。

 長期間、ストレスを持っている方の多くは、心身の状態がイライラ傾向です。人の感情は、『五行論』の五臓(肝・心・脾・肺・腎)で分類すると以下のようになります。

   『肝』⇒『怒』、 『心』⇒『喜』、 『脾』⇒『思』、 『肺』⇒『悲』、 『腎』⇒『恐』

 従って、イライラした状態は、『怒』に当たり、『肝』に影響を与えることになります。よって、治療方針は、『肝』の状態を良好にする治療を行なうことで、改善できることになります。

 東洋医学は、現代医学のように『悪いものを取り除く』などの治療とは異なり、身体の『自然治癒力』を、感覚神経を通して、導き出す治療法です。

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