前回のブログ『老廃物とは?』で述べたように、老廃物は、身体の異常を起こさせる原因の一つです。
老廃物には、ただ身体にとって悪いことばかりでなく、下記のように身体の異常の警報装置(危険信号)にもなります。
排便 ⇒ 消化器系の異常
排尿 ⇒ 腎臓や身体全体の異常
汗 ⇒ 身体の臓器の状態の異常
呼吸 ⇒ 心肺機能の異常 など
汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、また生まれてからの生活環境で、汗腺の数は人それぞれ異なっているといわれています。
エクリン腺は、全身に分布していて、臭いのないサラサラした汗を出し、頭部の視床下部の体温調節中枢で制御されます。
一方、アポクリン腺は、大部分は腋窩(脇)に分布していて、粘り気のある汗を出し、大脳皮質により制御され、このアポクリン腺は、ワキガの症状の原因にもなり、粘り気のある汗が細菌によって分解される時に、異臭が発生します。
そして、発汗の機能は、大きく分けると、体感上昇に伴って身体を冷やすための発汗(温熱性発汗)と、精神的な緊張による発汗(精神性発汗)があります。
多汗症の原因には、臭いのないサラサラした汗を出すエクリン腺が関与し、全身に大量の汗をかく全身性多汗症と、手の平や足の裏など身体の一部に大量の汗をかく局所性多汗症があります。
また、身体の中の水分調節は、腎臓が大きく関与しますが、多汗症の場合は、発汗量が増えることで、排尿量が減り、尿の質が濃くなることがあります。現代医学では、1日の排尿量が400ml以下になると、乏尿と診断されます。
現代医学の視点からの多汗症の原因は、中枢神経や自律神経の異常、循環器障害、内分泌(ホルモン)異常、代謝異常、精神的ストレスなどがあげられます。
一方、東洋医学では、多汗症は『汗証』の中の症状に含まれ、津液(体内に存在する液体)の大量の汗が洩れ出る状況です。
この事から、まず第一に、『気』の作用に『固摂作用(津液や血などが必要以上もらさない働き)』があり、これに関わる臓腑は『脾』と『腎』、更に、皮膚と津液に関わる臓腑の『肺』 の働きに影響が出ると考えられます。
従いまして、多汗症の治療方針では、『脾経』、『腎経』、『肺経』のツボが選ばれることが予測できます。
尚、『気』に関しては、当院のブログ【『気』とは?】をご覧ください。
ところで、汗証には、活動の有無に関わらずいつも汗が出ている『自汗』、寝汗の『盗汗』、汗が多量に出る『大汗』などに分類できます。
そして、東洋医学的診断は、下記の点を参考にして行ないます。
◇身体の温度(寒・熱)の状態
◇排尿の量や排尿回数
◇生活状態(食事・仕事など)
◇四診(※現代医学の問診や触診などに相当)による弁証(治療指針) など
多汗症は、大量の汗をかくことで体温が下がりますので、皮膚が冷えていることが考えられます。
また、東洋医学では、病気の原因である『病因』は、内因、外因、不内外因と考え、上記の問診等を考慮して、各々の患者様にあった治療方針を導きます(オーダーメイド治療)。 尚、『病因』に関しては、当院のホームページの『トップページ』をご覧下さい。
多汗症の治療は、1~数回の施術で改善する肩こり等の治療とは異なり、継続的な鍼(ハリ)やお灸による自律神経系や内分泌(ホルモン)系などの調整と、生活スタイルなどの改善が不可欠になります。