医療の視点からの脳に対する香りの効果

 私たちの周りでは、食欲増進を目的にスパイスなどを用いて調理したり、身体をリラックスさせるために香りを用いる習慣が取り入れられています。

 また、宗教的な儀式では、お香などが頻繁に用いられています。

 

 歴史上で香りにおいて、古代エジプトでは、クレオパトラが男性を虜にする目的の一つとして香りを用い、近世ヨーロッパでは、当時フランスでは入浴する習慣がなく、ベルサイユ宮殿内の体臭などの軽減に、バラなどの香りを取り入れたといわれています。

 

 臭いのメカニズムについては、以下の通りです。

  ① 気化した臭いの分子を、鼻の中の上部の粘膜『嗅細胞』で感知します。

  ② 感知した臭いの電気信号は、脳神経の嗅神経(感覚神経)を通って、大脳の側頭葉内側の『鉤(こう)』に伝えられます。

  ③ 『臭い』は、『視床』(感覚情報の中継・運動機能調節の補助)を経由しません。

      ※ 痛み、熱さ、冷たさなどの感覚情報は、『視床』を経由して大脳に伝えられます。

     『視床』を経由しない理由としては、動物が生き残るために、即座に危険を脳に伝え、身を守るためといわれています。

④ 臭いの記憶は、『海馬(短期記憶)』を通じて、『大脳』のあちこちに格納されます。

⑤ 頭部の中央に位置している『扁桃体』にも『臭いの記憶』は伝達されます。また、『扁桃体』は、情動と本能行動関わっていて、『視床下部』にも影響を与えます。 

      ※ 情動行動 ⇒ 逃避行動、攻撃行動、すくみ行動、表情の変化、血圧・心拍数・ホルモン分泌の変化、恐怖、怒り、喜びなど

               本能行動 ⇒ 摂食行動、飲水行動、性行動など

        視床下部 ⇒ 頭部の中央に位置し、自律神経(交感神経・副交感神経)・ホルモン分泌本能行動の調節に関わっています。

 

 では、医療的には、『香り』は、どのような効果があるでしょうか?

 東洋医学(中医学)では、『陰陽・五行学説』という考えがあり、身体の中の個々の機能が、均等にバランスが取れていることを健康とし、これに相当するものとして現代医学(西洋医学)では、『ホメオスタシス』と呼ばれる恒常性の維持の理論があります。

 この『ホメオスタシス』とは、脳などの中枢が体温や血液などの体内の環境を調整して、身体の中のバランスを取る機能のことです。

 この身体のバランスを調整している機能が、自律神経系(交感神経・副交感神経)内分泌系(ホルモンの分泌)です。自律神経は、あらゆる内臓の動きを調整し、ホルモンの分泌も同様に身体の維持に関わっています。

 しかし、この調整がうまく働かなくなると、頭痛、めまい、下痢、倦怠感などの身体の不調が現れてきます。

 

 現代医学では、生命に直接影響を及ぼさない疾患は、比較的軽視される傾向にあります。『自覚症状はあるんですが・・・・、病院の検査には異常がありません』というケースを時々耳にします。

 こういう場合の一つの原因として、体内環境の不均衡によるものと考えられます。

 

 自律神経系(交感神経・副交感神経)やホルモンバランスの治療は、発症から時間が経つほど、治りにくく、また生命に危険が及ばないことで、治療することが遅くなり、他の疾患を併発する傾向にあります。

 従って、自律神経系(交感神経・副交感神経)、内分泌系(ホルモン分泌)に対する治療は、比較的長期に渡ってしまいます。

 

 自律神経系、ホルモン系の治療には、東洋医学(はり・お灸・あん摩マッサージ・漢方など)は有効な方法です。

 また、『香り』を用いる方法は、脳へ刺激を与えて改善する疾患には、上記のメカニズム④または⑤から有効と考えられます。

 身体の体調に合った『香り』は、『健康増進』の一つのアイテムになります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です