当治療院の『標』と『本』及び施術時間について

 東洋医学では、

      『標(ヒョウ)』とは、病気の表面的な症状

      『本(ホン)』とは、病気の本質(原因)

といい、治療方針に関わってきます。

 当治療院では、

                               初診時 ⇒ 病状についての『原因』『予防方法』

                               2回目  ⇒ 初診時の問診でお聴きした事についての東洋医学的診断の結果

のご説明を、施術前に行なっています。

 患者さまの身体の状態は、皆異なっていますので、病気についてのご説明や施術時間は、当然ながら異なってきます。

 慢性の病気(冷え性や内科的疾患など)の患者さまの場合は、『標』の治療(肩こりや痛みなどの治療)のみを中心とした患者さまよりも、病気に対するご説明や施術時間が長くなります。

 長くなる理由は、『本』の治療(本治)は、多くは日常の生活から発生している慢性的疾患のため、次回の鍼灸治療までご自宅でご自身の病気の予防を行って頂くことで、病気の抑制・症状の軽減・治療回数の減少を目的にご説明を行なっています。

 慢性疾患(冷え性や消化器官疾患など)の『本』の改善には、まずはご自身の身体の状態を知ることが大変重要になります。

 『標』の症状【肩こりなど】は、比較的短期間(1~数回)で解消しますが、『本』の症状(冷え性など慢性的疾患)の場合は、定期的な治療回数が伴ってきます。

 より病気の改善を高めるには、患者さまが病気についてご理解して頂くことが大切と考えております。

 実際に、ご自身の身体の状態を理解していただいて、ご自宅で予防や生活改善を行なっている患者さまの症状は、鍼灸治療と併用することで、改善度が高まります。

 また、『灸あたり』などの鍼灸治療後の倦怠感やめまいなどの予防に、後揉法という軽いマッサージを、時間にゆとりがある患者さまに行なっています。

 通常の強い力で行なう血行改善を目的としたマッサージと違い、『鍼(ハリ)』や『お灸』の効果で血行が改善されますので、当治療院の後揉法は、軽く血流を促す程度で行なっています。

  ちなみに、背部(背中)の『お灸』は、『本』の慢性疾患の改善には、大変よい治療手段になります。

 

 

 

 

お灸の効果

 患者さまから、初診時に『この本に書かれているツボは、自分でお灸をする場合には効きますか?』という質問があります。この問いには、何とも言えないのが、正直の感想です。

 というのは、『書籍やインターネットなどに掲載されている一般の方々向けのツボ』は、現代の方々に分かりやすいように、多くは、現代の病名に対応して書かれています。あるいは、鍼灸でいわゆる『特効穴』と言われるツボがあげられています。

 しかし、本来ツボは、『弁証』などの東洋医学の診断方法で患者さまの身体を診て、どの『ツボ』がこの患者さまに最適なのかを選択すべきものと考えます。あくまでも、現代の病名は、現代医療(西洋医学)に適応した診断となります。

 現代医学の治療の大半は、病気になって効果が発揮する治療方法になります。つまり、ある基準や複数の条件を満たさなければ効果がないことになります。

 一方、病気になっていることが治療基準とする現代医学とは異なり、東洋医学は、健康を基準に考えていますので、病気になっての治療のみならず、現代医学の病気の状態になる前の状態『未病』の改善(=予防医学)にも適応します。

 ところで、東洋医学には、『標(ひょう)』と『本(ほん)』という言葉があります。『標』とは、表面に出ている症状であり、『本』とは病気の原因の本質を言います。特に、慢性的な病気や症状は、『本』の治療が必要になります。

 従いまして、はじめに述べました『この本に書かれているツボは、自分でお灸をする場合には効きますか?』についての回答は、『標』のような対症療法には効果があるかもしれませんが、全ての人に効果があるとは限りません。特に慢性的な冷えなどの症状の改善の治療には、『弁証』などの東洋医学的診断方法などを用いて、病気の原因を判断することも大切になります。

 また、ご自宅でのお灸の効果を上げるには、数回の問診などを行ない、『弁証』という診断方法による東洋医学に精通されている医師や鍼灸師からのアドバイスが重要になります。

 更に、ご自宅でお灸をすえる場合は、第三者にして頂くことが、より効果が上がると考えます。

 身体を修復するのは、活動している時よりも安静している時の方が高いからです。活動して覚醒している時は、自律神経の交感神経が優位になっています。一方、自律神経の副交感神経が優位の時が、身体の回復には最適の状態です。

 しかし、自分自身で行なうお灸(セルフお灸)は、第三者からお灸をやって頂くお灸よりも交感神経が優位に働いている状態です。より身体の改善を考えるならば、第三者からやって頂くお灸のほうが、副交感神経が優位になり、改善の効果を上げることになります

 昭和のお灸の名人『深谷伊三郎』先生は、『経穴(ツボ)は効くものではなく、効かせるもの』という名言を残されています。この意味は、効果のあるツボを選び、そのツボに適度な刺激を与えることが大切であることを述べています。

 ご自宅でお灸をすえる場合は、自分の身体の状態を、客観的に知ることが、より効果を上げる秘訣になります。

 

『気』とは?

 鍼灸師の方が、患者さんや鍼灸師同士の会話で、『気の流れを調整する』、『気を廻らす』、『気を高める』などの言葉を使っている事を、時々耳にします。『気』について調べると、『生命エネルギー』のことをいいます。正直言って、現代の一般の人たちには、不可解な言葉であり、すんなり納得できない表現と思います。実際に『気』とは、目に見えるものではなく、実態がつかめないモノだからです。

 また、鍼灸治療が普及しない原因として、現代医学のインフォームドコンセントの観点から、鍼灸師の方々が、理解し難い古人の使っていた言葉を、現代の人々にそのまま伝えるということで、現代に合った表現に変える努力をしなかったことが普及しない一つの原因と考えられます。

 これから鍼灸治療を広めていくには、このような現代の人たちにも理解できるような説明や表現方法を見直していく必要性があると考えます。

 

 東洋医学の『陰陽論』の考えで、下記に示すように、相反する『陰』と『陽』が、相互関係を維持することで、自然界(身体)のバランスをとっているという考え方があります。

  【陰】⇒ 下、内、夜、女、老、内側、裏、胸腹、下部、五臓、寒冷、慢性、暗、静、血、津液、液体

  【陽】⇒ 上、外、昼、男、幼、外側、表、脊背、上部、六腑、温熱、急性、明、動、気、気体

 

上記の陰陽論から、『気』の性質は、【陽】のグループに属し、温かく、機敏で、動きがあるイメージが出来ると思います。

 また、『気』の作用には、下記の作用があります。

    温煦作用・推動作用・気化作用・固摂作用・防御作用

 

 さて、現代医学には、生体の機能とそのメカニズムを解明する『生理学』という学問があります。この生理学を活用して、『気』についてご説明します。

 身体の仕組みでは、食べ物は、口から入って、食道 ⇒ 胃 ⇒ 小腸 ⇒ 大腸 ⇒ 肛門(膀胱) の順に動いていきます。この過程で、食べ物は、下記のように色々な臓器でさまざまな栄養素に分解されます。

  胃 ⇒ アルコール

  小腸 ⇒ 水分、電解質(Na、K、Ca、Mgなど)、糖質、蛋白質、脂質、ビタミン(A、D、E、K、B1、B2、Cなど)…

  大腸 ⇒ 水分など

 そして、栄養素は摂取したままの形では身体の中に吸収されないので、下記のような消化酵素によって適度に分解され、各臓器から吸収されます。

  口 ⇒ 唾液

  胃 ⇒ 胃液

  膵臓 ⇒ 膵液

     小腸 ⇒ 腸液

 このような食べ物を様々な成分に変化させる働きが、東洋医学の『気』に相当します。

 また、その他の臓器には、下記のような働きがあります。

    腎臓 ⇒ 水分・電解質の調節、体液pHの調節、ホルモンの産生や調節、代謝産物の排泄

    肝臓 ⇒ 腸で吸収された物質を合成・貯蔵、薬物や毒物の解毒など

    血管 ⇒ 全身に栄養素や白血球などを運搬する

 このように、様々な臓器で行なわれる働きが、東洋医学の『気』の作用に相当します。

 従いまして、『気を高める』とは、様々な身体の各機能を高めたり代謝を上げることで、下記のような『気の性質』である

   ◇暖かさ(温煦作用

   ◇機敏な動き(推動作用

   ◇臓器に合った成分に変化させる働き(気化作用

   ◇血液中の血小板(固摂作用

   ◇血液中の白血球などの免疫系(防衛作用

が現代医学に相当することになります。

  このように、現代では分かりづらい『気』という目には見えないモノなど、『生理学』という現代医学のツールを利用することにより、鍼灸治療が、一般の方々に受け入れやすい環境になると考えています。

冷え性の改善の道(東洋医学編)

 

 東洋医学では、冷え(寒熱)は重要な症状と位置づけられていますが、現代医学では、高熱を除いて、余程のことがない限り、生命に別状がない為か、あまり重要視されていないのが現状です。

 今回は、約1年前(14年2月8日)更新した『冷え性治療効果の持続性向上法②【東洋医学編】』の内容をさらに掘り下げて、東洋医学の視点から、冷え性についての原因と治療方針について述べます。

当院のホームページでも述べているように、東洋医学では、病気の原因を『病因』といい、大きく3つの要因とする『内因=過度の感情』、『外因=過度の気候変化(温度・湿度など)』、『不内外因=仕事、食生活など生活環境に伴う事』があげられます。

従いまして、どのような治療で改善しても、上記の『病因』の要素を改善しない限り、病気が再発します。『病因』をなくすことが、病気や症状の改善、快復につながります

東洋医学の『陰陽論』の考えで、下記に示すように、相反する『陰』と『陽』が、相互関係を維持することで、自然界(身体)のバランスをとっているという考え方があります。

  【陰】⇒ 下、内、夜、女、老、内側、裏、胸腹、下部、五臓、寒冷、慢性、暗、血、津液、液体

  【陽】⇒ 上、外、昼、男、幼、外側、表、脊背、上部、六腑、温熱、急性、明、気、気体

従いまして、『冷え性』を改善させることに重要なモノとして、【陽】に属する『気』が大変重要になります。

 『気』の作用には、下記の作用があります。

    推動作用・防御作用・温煦作用・気化作用・固摂作用

特に、身体を温める作用に、『気』を増やす事で、温煦作用を高めることが重要になります。

また、『気』には、下記の5種類があり、これらを増やす事が『冷え性』の改善になります。

  清気・宗気・衛気・営気・元気

 『気』という言葉をあげると、大半の人が『宗教的なイメージ』を持って、不信感や毛嫌いする方がいらっしゃると思います。

 ということで、この東洋医学の『気』というモノを、上記の【陰】と【陽】を用いて、ご説明します。

  『宗気』は、五臓の『肺』(≒呼吸器系)と『心』(≒循環器系)に関わります。ちなみに五臓とは、肺・心・脾・肺・腎です。

まず、大気中の『清気』(≒酸素)を口から取り入れて、肺から得た酸素(≒清気)と結合した血液中の赤血球と、食べ物から得た栄養素(≒営気)が結合して出来た血液が、心臓のポンプ作用(=『気(宗気)』の推動作用)で、全身に送られます。『宗気』とは、例えれば、口から取り入れた『酸素』と食べ物の『栄養素』を合わせたモノになります。

  従って、上記の事から、冷えの改善には、下記があげられます。

    ① 酸素を多く取り入れるように、呼吸器系の改善

    ② バランスの取れた栄養素を取り入れる為に、消化器系の改善

 また、身体の護るバリアの役目をするモノに、『皮膚』があります。皮膚が乾燥したり、ケガをすることにより、外部から身体を護る機能が低下します。皮膚を養う栄養は、血管で運ばれます。冷えることで熱を逃がさないように血管が収縮し、血流が減少し、栄養が不足し、皮膚に栄養が減少し、バリア機能(≒『衛気』)が低下します。

 このバリア機能の改善にも、上記の②があげられます。

 続いて、『元気』という『気』は、五臓の『腎』(≒生殖器・泌尿器・遺伝)に大変関わっています。『腎』には、『腎陰』と『腎陽』とがあると考えられています。

 例えば、筋肉は運動することで血液中(液体)の栄養素を分解し、また自動車は燃料(液体)を気化して、熱を産生します。『腎陰(液体)』と『腎陽(気体)』の関係もこのようなイメージを持って頂くと分かりやすいかと思います。

 『腎陰』(≒尿や血液などを含む)が停滞すると、液体である『腎陰』は、身体を冷やします。身体を温めるためには、液体の『腎陰』から気体である『腎陽』に変化させ、【陽】の『気』を増やす事で、身体を温めることが出き、下記の点に着目することで、生命力(≒『元気』)が向上します。

    ③ 血液など循環器系や生殖器系・泌尿器系などホルモン分泌、自律神経などの調整による代謝・機能快復を目的とした予防・改善

 このように、『冷え性』に対する治療は、上記の①~③を同時に行なう必要があります。

 また、『冷え性』の場合は、慢性化していることが多いので、継続した治療・改善が大切であり、問診など第三者の観察によった客観的な身体の状態を再認識することが、身体の改善につながります。

冷え性の改善の道(現代医学編)

 現代医学では、『冷え症』とは、ストレス(仕事、ダイエット、エアコン、生理痛など)により、自律神経のバランスが乱れ、交感神経の過剰興奮の持続的状態を伴う症状をいいます。

また、現代医学の視点では、体温調整はホメオスタシスの作用により、免疫系・ホルモン系・自律神経系の3つ要素の調和により機能しています。

 実際には、皮膚などの冷たさを感じるセンサー(受容器)が働き、身体の下記のシステムが機能し、体温を上昇させます。

  ◇ 交感神経の作用により、皮膚の血管を収縮させ、熱を逃がさないようにします。

  ◇ 交感神経の作用により、副腎髄質に働きかけ、アドレナリン(ホルモン)を増やし、熱を産生させます。

  ◇ 視床下部からの命令により、甲状腺ホルモンを増加させ、熱産生を生じさせます。

  ◇ 体性神経の指令により、骨格筋を動かし、身体の震えを起こし、熱を産生させます。

 従いまして、『冷え症』の原因は、上記のような『骨格筋』・『血管』・『自律神経』・『ホルモン』などの影響となります。

 ゆえに、現代医学の治療手段は、上記の点から、下記の対症療法となります。

  ①運動不足を解消し、筋肉量を増やします

  ②熱を逃がさないように、服装や生活環境の改善を行ないます。

  ③食生活の改善により、血管の老化、血流改善を行ないます。

  ④薬物療法により、熱産生を促します。

ツボとは?

 『ビッグデータ』という言葉があります。そのままの意味では巨大なデータになります。IT用語として、通常のデータベースでは扱えないほど巨大なデータのことです。

 昨今、この大量のデータ『ビッグデータ』を、色々な業界で、大量の情報の中から有益な情報を抽出、また複合的に分析し、活用することが行なわれています。

 近年、医療業界でも疾病予防などを目的に、この『ビッグデータ』が注目されています。

 現代医学では、最先端技術と共に、高齢者の増加に伴い予防医学が高まっています。

 この疾病予防の観点では、東洋医学は有用な学問であり、治療手段になります。実は、この東洋医学は、数千年に及ぶ臨床データの蓄積からの『ビッグデータ』に基づいた学問です。

 『ビッグデータ』の使い道は、 一般に、

①情報の生成 ⇒ ②情報の蓄積・処理 ⇒ ③情報分析 ⇒ ④価値・判断

の経過を経て、利用されます。

 これを東洋医学の視点に当てはめると、下記のようになります。

     ① 数千年に及ぶ患者の身体の状態、症状、生活環境など疾病発症時の情報(ビッグデータ)

     ② ①の症状に対する対症療法の集約 ⇒ ツボ、薬(漢方薬)の発生

     ③ 弁証論治(四診、臓腑弁証、気血津液弁証、経絡弁証など)による治療方針の選択

     ④ ツボの選穴、薬(漢方薬)の処方など

 『ツボ』とは、数千年に及ぶ患者の臨床情報の結果生み出された『症状の発生場所』あるいは『症状が緩和できる場所』になります。

 鍼灸治療は、この『ツボ(経穴)』を用い、未病(病院で病気と診断する以前の状態)の改善、病気の緩和に有効な治療方法の手段の一つになります。

 しかし、巷(ちまた)では、病気になった患者さんが、身体の改善、治療を選択する際、鍼灸治療を選択肢として鍼灸院を訪問することは少ないです。『痛い』、『熱い』などのイメージが、普及の壁になっている原因の一つとして挙げられます。

 

痒みは、予防・生活改善が大切!

 現代医学(西洋医学)での痒みの原因は、

  ・肥満細胞から分泌されるヒスタミンの影響

  ・皮膚の乾燥による表皮の水分や皮脂のバリア機能の低下による知覚過敏

などがあげられます。

 最近では、痒みの原因の一つには、自律神経の影響も受けていると言われています。

 

 東洋医学では、病気の原因は、

  ①内因(内傷) ⇒ 過度の感情(七情/怒・喜・思・憂・悲・恐・驚)

  ②外因(外感) ⇒ 自然界の気候の変化(六淫/風・寒・暑・湿・燥・火)

  ③不内外因   ⇒ 飲食(量の過不足・質の偏り)・労倦(労働・休養・房事)・外傷瘀血痰濁

の大きく3つの条件があげられます。

 現代医学(西洋医学)においては、動物実験などを含めて薬剤が開発されている為なのか、①内因(過度の感情)や②外因(過度の気候変動)は、一般には、治療として重視されていません。しかし、最近では、脳神経・脳科学などの研究発展により、内臓の調整に非常に関わる自律神経などの影響(『こころ』の変化など)を考慮するようになって来ています。

 

 また、東洋医学では、臓腑弁証という治療方針の考えから、五臓(肝・心・脾・肺・腎)六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)などが調和することで、心身が健康状態であり、この調和が崩れることが病気の発症する原因の一つであると考えます。

 鍼灸では、四診(望診・聞診・問診・切診)などの診断方法用いて患者様の身体の状態の情報を集め、①~③と臓腑弁証などの診断方法の考えから治療方針を導き出し、施術を行ないます。

  自宅での症状の緩和や慢性の痒みの場合は、上記の考えから、下記の予防(生活改善)が考えられます。

   ◇飲食の管理

       (辛い、甘い食べ物の摂取により『脾』の機能失調により、体内に熱がこもる為に痒みが発生)

   ◇イライラやストレスなど状況を減らす

       (上記の原因で、気・血・津液が侵され、『肝』や『心』などに臓腑機能の失調が発生

       ≪注釈≫ 『気』・『血』・『津液』とは、身体の臓腑及び組織などを動かす為の血液やリンパ液などのエネルギーです。

  ◇その他

 

 どのような病にも、必ず原因があり、結果として『病』が発生します。

 病気が慢性化しない、あるいは、病気が重くならないように、日頃から、カラダのケアを考え、生活改善を行なうことが大切になります。

 

リハビリや看護などの介助で、大切なことの一つとして…

  リハビリや慢性的な病気を患っている身近な方への介助は、一所懸命に行なえば行なうほど、介助する側が、肉体的あるいは精神的に参ってしまい、結果、介助する方が病気を発症したり、介助する、または介助される側がさらに病気を悪化させることがあります。

 健康についてWHO(世界保健機構)では、『健康とは、疾病がないとか、虚弱でないということではなく、肉体的にも、精神的にも、社会的にも、心身が満たされた状態である』ことを述べています。

 従いまして、私も介助の経験を通して、上記のような介助する、される側の健康が悪化する状況に傾かないように、今一度、介助する側が、自分自身の健康を維持できる手段や環境の改善を考えておくこと大切と思います

 さて、介助する側が最も身体に異常をきたす状態は、ストレスや過労による心身の疲労になります。

 東洋医学の臓腑弁証の観点から端的に述べますと、健康とは、『五臓六腑の働きのバランスが調和した状態』になります。

   ※ 五臓 ⇒ 肝・心・脾・肺・腎

   ※ 六腑 ⇒ 胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦

 また、ストレスや肉体疲労が身体に影響を与える状態は、東洋医学では、下記のように幾つかの考え方が出きます。

 ①肉体疲労などにより、呼吸器機能に影響を受け、心肺機能が低下して、身体に栄養(血液など)を送れない状態になります。

    肉体疲労 ⇒ 肺気虚 ⇒ 心気虚  ※心肺両虚証

 ②ストレスや肉体疲労などにより、消化器機能が低下、栄養吸収不足になり、身体の機能が低下します。現代医学では、ストレスを最も受けやすい臓器とし、消化器系(胃・小腸・大腸など)があげられます。

  尚、『脾』とは、現代医学の消化器系に相当します。

    ストレス・肉体疲労 ⇒ 脾気虚 ⇒ 心血虚 ※(心脾)気血両虚

 ③精神疲労により消化吸収不足が生じ、身体の栄養(血液など)とされるエネルギー生成が減ること、血液の循環機能が低下します。

    精神疲労など ⇒ 肝気虚 ⇒ 肝血虚 ⇒心血虚 ※(心肝)血虚症

 ④肉体疲労やストレスにより、身体を冷やすラジエーター機能が低下し、身心の異常(不眠や精神不安など)や体温調節の低下、足腰のだるさを発症させます。

    過労やストレス ⇒ 腎陰虚 ⇒ 心火亢進

 ⑤肉体疲労により、身体の循環液(現代医学では、血液やリンパ液などに相当)の停滞が起き、四肢の冷えやむくみが発症し、血行障害を生じさせます。

    肉体疲労 ⇒ 腎陽虚 ⇒ 心陽虚  ※(心腎)陽虚証

 ⑥その他

 

 以上の様に、身体の状態が、いわゆる『未病』(「健康状態」~「病院で病気と診断される状態」の経過の心身の状態)の時に、症状に対する何らかの治療や改善・予防方法を取り入れることが大切になります。

 身体の疲労感やストレス解消には、自律神経の調整や筋肉疲労の改善、血行促進などの効果がある鍼灸治療は、有効な方法になります。当院のホームページ上部の『治療効果』をクリックしていただければ、『治療と回復効果』のグラフで、今後の治療や予防の改善に対する考え方にお役に立かと思います。

 また、日常での改善・予防方法の一つとして、即効性はありませんが、上記の①~⑤のように、循環器系や呼吸器系の働きを改善することは、介助に関わる方の『未病』の改善になりますので、どこでも場所を選ばずに出来る『腹式呼吸法』を行なうことも良いと思います。

病院(現代医学)治療の視点からみた鍼灸治療効果の信憑性は?

  病院の治療は、内科的治療の場合は、一般にお薬による治療です。

 お薬は、膨大な資金と労力を使って、下記の長い期間を経て誕生します。

    ◇ 基礎研究 ⇒ 非臨床試験(動物実験など) ⇒ 臨床試験 ⇒ 承認

 

 従いまして、病院で処方されるお薬は、ある一定の基準を満たしていれば、科学的に効果が得られることが出きます。但し、副作用も伴います。

 

ところで、プラセボ効果とういう言葉があります。効果のない成分が入っていない薬によってもたらせる効果です。

 鍼灸治療の経験がない方、あるいは身近に治療の結果を目にしたことがない方々には、鍼(はり)やお灸による治療は、医学的、あるいは科学的視点から見ると、プラセボ効果や宗教的な心理効果と同じように見えるのかも知れません。

 

 話は変わりますが、今日では、『笑い』は、下記の点から免疫力を高める効果があることが、医学的にも証明されつつあります。一昔の医学の常識では、考えられないことの一つです。

 

   生理的効果 ⇒ ①血液成分のNK細胞の増加により防御機能の上昇(免疫力アップ)

           ②糖尿病患者に対して、血糖値の減少

           ③自律神経の副交感神経が優位

 

   医学的証明 ⇒ ①笑うことで表情筋群が働き、ストレス解消

           ②血圧低下(正常化)

           ③心臓の機能向上

           ④血液中酸素の増加 

                ※循環器疾患の治療に効果

 しかし、『笑う』ことは身体に良いが、ではどのような疾患で、どのくらいの『笑い』で、どのくらいの効果が得られるといことに関しては、今の現代医学では、まだ証明には至っていない状況です。

 東洋医学は、『鍼(はり)をしたから良くなった』、『お灸をしたから改善した』、『このような食べ物を摂ると元気になった』という治療データーなど、数千年の臨床の積み重ねで出来た学問になります。従いまして、東洋医学は、医学的あるいは科学的証明の出来、不出来で判断する現代医学(西洋医学)とは、治療方針や考え方が異なっています。

 

 一昔では、迷信や言い伝えなどは、ちまたではよく聞くことが出来ました。しかし、現代では、客観的に現されたこと、あるいは目に見えるものなどが、日常では受け入れられます。

 『治癒力』もその一つで、現代医学(病院)では、調整力、回復力、免疫力に置き換えられて、今日では一般に使われるようになっています。

 科学的に解明されていないことと、科学的根拠がないのとは、全く違います。

 『鍼(はり)』や『お灸』の治療を行なうと、副交感神経が優位になり、また血管の拡張を促し血行を良くする働きがあります。しかし、一方では、いまだ一般の方々には、鍼灸治療の治療効果の認知度が低く、現代医学に関わる医療人、病院関係者、あるいは、病院治療(現代医学)以外に治療を受けたことがない方々には、鍼灸治療は、まだまだ受け入れられていないのが実情です。

 尚、当院で治療されている方々には、なぜ『鍼(はり)』や『お灸』が身体の体調改善に効果があるのか、詳しく解りやすく、ご説明しております。

我慢をしなくていい!鍼灸ダイエット

  私なりのダイエットのセオリーは、『我慢をしない。でも、ちょっとの努力と継続!!』です。

 約15kgの減量も経験があり、リバウンドも、ちょっとの継続的な努力で回避できます。

 

 一般に、肥満の原因には、主に下記のことがあげられます。

  ① 過食

  ② 咀嚼不足

  ③ 間食が多い

  ④ 生活の不摂生(食事の時間及び回数・睡眠時間・偏食など)

  ⑤ 運動不足

  ⑥ ホルモン分泌異状による疾患

  ⑦ ストレスなど

 

 ダイエットを成功するには、『何のために、この方法でダイエットを行なっているのか』を理解することが、大変重要です。

 しかし、目的を理解せず、闇雲にダイエットを行うことは、継続的にダイエットが出来なくなり、再び太る原因になります。

 

 儒教で『中庸』という言葉(※過不足がなく調和がとれていること)があります。健康な状態とは、身体がこのような『中庸』の状態のことです

 この状態(中庸)から、病院で病気と診断される直前までの『病気までの進行のプロセス』を、『未病』と呼ばれています。

 肥満の状態は、病的でない『未病の肥満』の状態と、病的な『肥満』の状態に分けられます。

 

 ところで、東洋医学には現代医学の問診と診察に相当するものに、『四診』と呼ばれる病の診察方法があります。

  ・望診 ⇒ 視覚を通じての診察(顔色や舌の状態など)

  ・聞診 ⇒ 聴覚や嗅覚での診察(呼吸の状態や口臭・体臭など)

  ・問診 ⇒ 問いかけを通じての診察(汗の状態・排尿便・睡眠・生活環境など)

  ・切診 ⇒ 触覚を通じての診察(身体の痛み・脈の状態・腹診など)

 

 肥満になる原因は、人それぞれで異なっていますので、当院では、上記の『四診』を用いて、『オーダーメイド治療の前準備』を行います。

この診察(四診)と解剖・生理学の視点・患者様の生活スタイルなどを考慮することで、『肥満の原因』が解ると同時に、患者様の『肥満解消』の治療方針が決定されます。

 鍼灸治療は、『鍼(ハリ)』を用いて痛覚と触圧覚に、『お灸(きゅう)』は温痛覚に、それぞれ身体に刺激を働きかけることで、身体の改善を促す治療法です。

 

 肥満の改善方法は、肥満の原因①~⑦の解消です。

 当院での肥満に対する治療は、下記の趣旨で治療方法を行ない、身体全体の代謝を総合的に上げて行く治療です。

A)  生活スタイルの改善指導(※改善出来る範囲を患者様との問診で検討し、簡単ダイエットの指導)

B)  自律神経の調整の鍼灸治療(※消化器系の改善《肥満原因①~④》

C)  ホルモン分泌の調整の鍼灸治療《肥満原因⑥》

D)  神経伝達物質の調整の鍼灸治療《肥満原因⑦》