東洋医学では、冷え(寒熱)は重要な症状と位置づけられていますが、現代医学では、高熱を除いて、余程のことがない限り、生命に別状がない為か、あまり重要視されていないのが現状です。
今回は、約1年前(14年2月8日)更新した『冷え性治療効果の持続性向上法②【東洋医学編】』の内容をさらに掘り下げて、東洋医学の視点から、冷え性についての原因と治療方針について述べます。
当院のホームページでも述べているように、東洋医学では、病気の原因を『病因』といい、大きく3つの要因とする『内因=過度の感情』、『外因=過度の気候変化(温度・湿度など)』、『不内外因=仕事、食生活など生活環境に伴う事』があげられます。
従いまして、どのような治療で改善しても、上記の『病因』の要素を改善しない限り、病気が再発します。『病因』をなくすことが、病気や症状の改善、快復につながります。
東洋医学の『陰陽論』の考えで、下記に示すように、相反する『陰』と『陽』が、相互関係を維持することで、自然界(身体)のバランスをとっているという考え方があります。
【陰】⇒ 下、内、夜、女、老、内側、裏、胸腹、下部、五臓、寒冷、慢性、暗、静、血、津液、液体
【陽】⇒ 上、外、昼、男、幼、外側、表、脊背、上部、六腑、温熱、急性、明、動、気、気体
従いまして、『冷え性』を改善させることに重要なモノとして、【陽】に属する『気』が大変重要になります。
『気』の作用には、下記の作用があります。
推動作用・防御作用・温煦作用・気化作用・固摂作用
特に、身体を温める作用に、『気』を増やす事で、温煦作用を高めることが重要になります。
また、『気』には、下記の5種類があり、これらを増やす事が『冷え性』の改善になります。
清気・宗気・衛気・営気・元気
『気』という言葉をあげると、大半の人が『宗教的なイメージ』を持って、不信感や毛嫌いする方がいらっしゃると思います。
ということで、この東洋医学の『気』というモノを、上記の【陰】と【陽】を用いて、ご説明します。
『宗気』は、五臓の『肺』(≒呼吸器系)と『心』(≒循環器系)に関わります。ちなみに五臓とは、肺・心・脾・肺・腎です。
まず、大気中の『清気』(≒酸素)を口から取り入れて、肺から得た酸素(≒清気)と結合した血液中の赤血球と、食べ物から得た栄養素(≒営気)が結合して出来た血液が、心臓のポンプ作用(=『気(宗気)』の推動作用)で、全身に送られます。『宗気』とは、例えれば、口から取り入れた『酸素』と食べ物の『栄養素』を合わせたモノになります。
従って、上記の事から、冷えの改善には、下記があげられます。
① 酸素を多く取り入れるように、呼吸器系の改善
② バランスの取れた栄養素を取り入れる為に、消化器系の改善
また、身体の護るバリアの役目をするモノに、『皮膚』があります。皮膚が乾燥したり、ケガをすることにより、外部から身体を護る機能が低下します。皮膚を養う栄養は、血管で運ばれます。冷えることで熱を逃がさないように血管が収縮し、血流が減少し、栄養が不足し、皮膚に栄養が減少し、バリア機能(≒『衛気』)が低下します。
このバリア機能の改善にも、上記の②があげられます。
続いて、『元気』という『気』は、五臓の『腎』(≒生殖器・泌尿器・遺伝)に大変関わっています。『腎』には、『腎陰』と『腎陽』とがあると考えられています。
例えば、筋肉は運動することで血液中(液体)の栄養素を分解し、また自動車は燃料(液体)を気化して、熱を産生します。『腎陰(液体)』と『腎陽(気体)』の関係もこのようなイメージを持って頂くと分かりやすいかと思います。
『腎陰』(≒尿や血液などを含む)が停滞すると、液体である『腎陰』は、身体を冷やします。身体を温めるためには、液体の『腎陰』から気体である『腎陽』に変化させ、【陽】の『気』を増やす事で、身体を温めることが出き、下記の点に着目することで、生命力(≒『元気』)が向上します。
③ 血液など循環器系や生殖器系・泌尿器系などホルモン分泌、自律神経などの調整による代謝・機能快復を目的とした予防・改善
このように、『冷え性』に対する治療は、上記の①~③を同時に行なう必要があります。
また、『冷え性』の場合は、慢性化していることが多いので、継続した治療・改善が大切であり、問診など第三者の観察によった客観的な身体の状態を再認識することが、身体の改善につながります。