加齢と美容と老化に対する東洋医学的アンチエイジング

 

加齢とは、生物が生まれてから死ぬまでの時間的経過を指しますので、人にとって加齢を抑えることは出来ません。

しかし、『皮膚』、『骨』、『筋肉』、『血管』、『脳』、『心臓』などの働きを活性化することで、老化を抑えることが出来、美容にも効果が発揮出きます。

30代以上の方、あるいは、少なくとも、健康な身体であれば、現在の状態を保つことが重要です。

いわゆる現代医学で用いられる『皮膚年齢』、『骨年齢』、『血管年齢』などの生理的働きを、如何に低下させず、維持させることが大切になります。

例えば、『皮膚年齢』の場合、20歳頃を境に『ターンオーバー』が28日以上掛かる状態になっていきます。40歳であれば約2倍掛かると言われます。

身体の各部位(皮膚や血管など)を

  実年齢、もしくはよりも若い状態にするには、東洋医学では、『五臓六腑』や『陰陽』などの調和がとれている『健康な状態』

にすることです。

 

 

ところで、『五臓』とは、『肝』、『心』、『脾』、『肺』、『腎』を指し、現代医学での『肝臓』、『心臓』、『脾臓』、『肺(臓)』、『腎臓』に相当はしていません。『肝≠肝臓』、『心≠心臓』、『脾≠脾臓』、『肺≠肺(臓)』、『腎≠腎臓』ということになります。

 東洋医学での『五臓』は、現代医学に置き換えると、『肝』≒『血液などに関する働き』、『心』≒『心機能や脳などの働き』、『脾』≒『消化器系などの働き』、『肺≒呼吸器系の働き』、『腎≒泌尿器・生殖器などの働き』といった身体の中の働きを意味しています。

現代医学での『肝臓』、『心臓』、『脾臓』、『肺(臓)』、『腎臓』は、臓器そのもの【モノ】を指しています。

従いまして、東洋医学では、『五臓六腑=身体の中の働き』であり、現代医学の臓器そのもの【物体】を表している訳ではありません。

なぜ、このような違いが発生した理由は、解体新書を翻訳した『杉田玄白』が原因と言われています。

『五臓六腑』という言葉は、中国から日本に伝えられました。しかし、オランダ語で書かれた解剖図の名称(臓器)を、当時の日本では、それ(臓腑)に該当する言葉がありません。そこで、『杉田玄白』が、『東洋医学』から『五臓六腑』を引用したことで、上記のような『働き≠臓腑』の違いが発生することになりました。

『五臓六腑』とは、身体の『臓器自体(モノ)ではなく、働きである』ことを記憶に留めて置く事で、『東洋医学』に関わる美容・健康などの予防学を理解するのに役立つと思います。『五臓六腑』を現代の臓器(モノ)とする考えは、東洋医学の理解を混乱させます。

 

 

学校の教科書に掲載された事柄について少し述べましたが、『鍼灸』について少し記述された有名な著書もあります。

江戸時代の儒学者『貝原益軒』によって、健康についての日常生活の心得を書いた『養生訓』です。『鍼(はり)』や『お灸』について、少し書かれています。

また、俳人、松尾芭蕉による「奥の細道」の中で

「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。・・・笠の緒付かえて、三里に灸すゆるより、松島の月先心にかかりて云々…」
という文が記載しています。『三里』とは、足三里というのツボになります。

ご参考まで。

 

 

話は戻りますが、人は生まれてから現在まで、身体の外部から色々な影響を受けて、生活しています。老化を早める原因であるリスクを回避あるいは、改善することが、老化防止になります。

そのためには、まずは、自分自身の身体の状態、生活環境を十分に理解することが、美容、健康になり、いわゆる『若返り』になります。身体に良いことを行なっても、不健康になる環境を変えなければ、『若返り』は出来ません。

『病気は気から…』といいますが、東洋医学の観点から、実際の臨床でもこの言葉は反映され、慢性的な症状の改善につながります。

『気』については、当院ブログ『冷え性の改善の道(東洋医学編)』を閲覧ください。

 

病院の検査で、ある一定の状態になって病気とする現代医学とは異なり、慢性的な症状などの改善や養生については、東洋医学を精通している医師や薬剤師、お近くに鍼灸師などにお尋ねになると、現在の身体の改善のアドバイスを受けることが出きます。

また、『お灸』や『はり(鍼)』は、お年寄りがするものと思っている方がいらっしゃいますが、本来、年齢に問わず、身体の調整を行なえる手段の一つであり、血行や免疫力の促進、神経に対する刺激による機能回復などを目的とした改善を促すことが出きます。

身体の衰えを感じ始める30歳頃から健康を意識した生活を行なうことで、実年齢の若い状態を維持することが出きます。

身体の衰えを感じる前に、気になる部位に対して気を掛ける事が、大変重要になります。

もう少し踏み込んだ内容は、当院ブログ『東洋医学の視点からのアンチエイジング』をご覧下さい。

読書の効果

一週間ほど前、ある方との対話の中で、読書をするきっかけがありました。『読んでみます・・・』と返答。会話中のその場での社交辞令でなく、有言実行です。

翌日、うろ覚えの題名『・・編・』で検索し、本を購入しました。東洋医学など仕事に関する文献はよく目を通しますが、ここ十年以上、実用的な書籍以外のモノは、読んでいませんでした。

 

ところで、読書がもたらす現代医学的効果には、

・ネガティブ思考の改善

・加齢に伴う認知機能の改善

・感情が刺激されることによる脳の作用(集中力・記憶力・思考力など)の活性化

などが、あげられます。

 

一方、東洋医学では、病気の原因の一つに、『内因』というモノがあります。過度の感情『喜・怒・思・憂・悲・驚・恐(七情)』を受けることで、身体の変調を来たすと考えます。

上記のことを踏まえて、読書には、この七情の感情を整える作用が考えられます。

また、読書による東洋医学的身体の調整のしくみは、大まかに述べると、

【七情の感情の安定化】 ⇒ 【五臓六腑に対する調整作用】 ⇒ 【体調の改善】

になります。現代医学に置き換えると、『自律神経』や『ホルモン』など調整による免疫向上になります。

 

実際、読書し始めると、本の中の世界に入り、心が落ち着きます。

また、読書により共通の内容を共有することで、人との会話(コミュニケーション)の幅が広がります。

 

 

 

 

 

 

 

 

老廃物とミトコンドリア

人体には60兆の細胞があります。

細胞は、グルコース(ブドウ糖)を取り入れ、酸素を用いて、二酸化炭素と水を放出します。この過程で、生体エネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を産生します。このATPを産生するものが、高校生の生物の教科書にも掲載されている『ミトコンドリア』です。

ミトコンドリアは、ATPを生成する時に熱も産生しますが、機能が低下すると、活性酸素を生成させます。例えると、木材などを燃やすと炎が出ますが、良く燃えないと不完全燃焼を起こし黒い煙が増します。この煙が『活性酸素』に当たります。

人間は、呼吸することで一定の『活性酸素』を発生させますが、そのほかに、ストレス、紫外線、飲酒、喫煙などが原因でも『活性酸素』を発生させます。

また、老化の原因のひとつには、『活性酸素』が原因と言われています。『活性酸素』は、体内の細胞を酸化し破壊し、皮膚のたるみ、癌、動脈硬化などの原因を発生させます。

よって、『アンチエイジング(老化予防・抑止)』には、細胞の活性化が大切になります。身体が元気な状態であれば、『活性酸素』を発生しにくい状態になる訳です。それと同時に、身体の働きに不要になった物質『老廃物』を、呼吸、排便、排尿、発汗の生理作用で、身体の外へ排泄させることが大切になります。

東洋医学での健康維持の鍵として、①気血津液(血液や体液など)をスムーズに流れる環境、②身体の中の各々の臓器の円滑な働き、③寒熱(身体の適度な温かさ)があげられます。

まず、①についての説明です。身体全体に栄養を運ぶものは、カラダの中の血液あるいは体液などになります。それらの流れが滞ると、その行く先の身体の部位に栄養が届かなくなり、結果その細胞は衰えていきます。また、身体にとって不要なモノ(老廃物など)は、血液やリンパ液などで運ばれ、排泄されます。これも流れが滞ると、身体の内部に蓄積してカラダに悪影響与えます。カラダに流れる物質がスムーズに流れることが健康につながります

②についての説明は、東洋医学には、五臓(肝・心・脾・肺・腎)六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の働きがバランスよく保たれていることが健康である事の1つと考えます。いわゆる内臓の働きが順調に働くことが健康というわけです。

そして、③においては、身体の各部位の表面(皮膚)の温度及び身体の中の温度が、適切な温度であることが、健康のバロメーターになるということです。

話は戻りますが、ミトコンドリアの特徴は、飽食状態であると、働きが鈍くなるといわれます。従いまして、ミトコンドリアの働きを上げるには、程度の空腹を与えることが、よりカラダの生命エネルギーが上がり、健康的な身体にしていくことになります。また、このことはエネルギー消費も上がり、ダイエットにもつながります

これと似たように、神経の特徴も、適度の刺激を与えないと働きが鈍くなります。この場合も、神経細胞のミトコンドリアが影響を与えているのだろうと考えられます。

筋肉には、白筋(瞬発力のある筋肉)と赤筋(持久力がある筋肉)の2つがあり、近海の魚(ヒラメやキスなど)は白筋が多く、遠洋の魚(マグロなど)は、赤筋が多く含まれます。

そして、ミトコンドリアが多く含む筋肉は、持久力があり、また身体を支える筋肉でもある『赤筋』です。一般に、男性は白筋が多く、女性は赤筋が多いです。このことから、女性が男性よりも長生きする理由の1つとして、ミトコンドリアの量が影響しているのでは?と言われています。

よって、赤筋を増やす事が、『アンチエイジング』に効果を上げる方法になります。つまり、有酸素運動で赤筋の筋肉を増やし、適度の『空腹の時間』を作ることが、健康につながることになります。

そして、『ミトコンドリアの働きを活性化する』ことで、上記の①~③という健康の条件を、改善あるいは維持することができることになります。 

ミトコンドリアは、東洋医学の視点から考察すると、『気を産生する物質』と考えます。

 

一般に、現代(西洋)医学と東洋医学は、全く関係のない学問と思われがちですが、実は、現代医学は、遥か数千年前~現代に及ぶ時間を経て伝えられてきた東洋医学を、現代医学の発展を用いて証明させている学問と考えることができます

老廃物【多汗症編】

前回のブログ『老廃物とは?』で述べたように、老廃物は、身体の異常を起こさせる原因の一つです。

老廃物には、ただ身体にとって悪いことばかりでなく、下記のように身体の異常の警報装置(危険信号)にもなります。

排便 ⇒ 消化器系の異常

排尿 ⇒ 腎臓や身体全体の異常

汗  ⇒ 身体の臓器の状態の異常

呼吸 ⇒ 心肺機能の異常  など

汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、また生まれてからの生活環境で、汗腺の数は人それぞれ異なっているといわれています。

エクリン腺は、全身に分布していて、臭いのないサラサラした汗を出し、頭部の視床下部の体温調節中枢で制御されます。

一方、アポクリン腺は、大部分は腋窩(脇)に分布していて、粘り気のある汗を出し、大脳皮質により制御され、このアポクリン腺は、ワキガの症状の原因にもなり、粘り気のある汗が細菌によって分解される時に、異臭が発生します。

そして、発汗の機能は、大きく分けると、体感上昇に伴って身体を冷やすための発汗(温熱性発汗)と、精神的な緊張による発汗(精神性発汗)があります。

多汗症の原因には、臭いのないサラサラした汗を出すエクリン腺が関与し、全身に大量の汗をかく全身性多汗症と、手の平や足の裏など身体の一部に大量の汗をかく局所性多汗症があります。

また、身体の中の水分調節は、腎臓が大きく関与しますが、多汗症の場合は、発汗量が増えることで、排尿量が減り、尿の質が濃くなることがあります。現代医学では、1日の排尿量が400ml以下になると、乏尿と診断されます。

現代医学の視点からの多汗症の原因は、中枢神経や自律神経の異常、循環器障害、内分泌(ホルモン)異常、代謝異常、精神的ストレスなどがあげられます。

一方、東洋医学では、多汗症は『汗証』の中の症状に含まれ、津液(体内に存在する液体)の大量の汗が洩れ出る状況です

この事から、まず第一に、『気』の作用に『固摂作用(津液や血などが必要以上もらさない働き)』があり、これに関わる臓腑は『脾』『腎』、更に、皮膚と津液に関わる臓腑の『』 の働きに影響が出ると考えられます。

従いまして、多汗症の治療方針では、『脾経』、『腎経』、『肺経のツボが選ばれることが予測できます。

尚、『気』に関しては、当院のブログ【『気』とは?】をご覧ください。

ところで、汗証には、活動の有無に関わらずいつも汗が出ている『自汗』、寝汗の『盗汗』、汗が多量に出る『大汗』などに分類できます。

そして、東洋医学的診断は、下記の点を参考にして行ないます。

◇身体の温度(寒・熱)の状態

◇排尿の量や排尿回数

◇生活状態(食事・仕事など)

◇四診(※現代医学の問診や触診などに相当)による弁証(治療指針)   など

多汗症は、大量の汗をかくことで体温が下がりますので、皮膚が冷えていることが考えられます。

また、東洋医学では、病気の原因である『病因』は、内因、外因、不内外因と考え、上記の問診等を考慮して、各々の患者様にあった治療方針を導きます(オーダーメイド治療)。 尚、『病因』に関しては、当院のホームページの『トップページ』をご覧下さい。

多汗症の治療は、1~数回の施術で改善する肩こり等の治療とは異なり、継続的な鍼(ハリ)やお灸による自律神経系や内分泌(ホルモン)系などの調整と、生活スタイルなどの改善が不可欠になります。

 

老廃物とは?

 近年、病気や健康に関して『老廃物』という言葉が、よく用いられています。

 では、『老廃物とは、どのようなものなのか?』というと、体内で作られた不要代謝産物になります。いわゆる、工場で製品が作られて不要になった残り粕(カス)、あるいは、火が良く燃えない時に発生する煙や一酸化炭素などの不完全燃焼物に相当するものが、『体内の不要代謝産物』になります。

 これら代謝産物(尿酸、二酸化炭素、尿素、アンモニアなど)は、呼吸、発汗、排尿、排便などによって、体外に排泄されます。しかし、これらの物質が、体内に適切に排泄させないと、『むくみ』や『痛み』など、身体に異常をきたす原因になります。

 このように、身体の不要代謝産物を発生させない、あるいは適切に不要代謝産物を排泄させる身体に調節(生活改善など)することが大切になります。

 ところで、鍼灸業界では、『気の流れ』や『気の滞り』など、現代人にはあまり理解できない言葉を良く口にします。『気』を理解していない方々にいきなり、『気の話』をすると、宗教的な感じを与え、あるいは不信感を与える原因になり、昨今、鍼灸治療が普及しない原因の一つと考えられます。

 現代医学にインフォームドコンセントと言う言葉があるように、鍼灸治療家の方々も、一般の人々にもご理解できる言葉を使うべきであり、治療効果にも影響されると考えます。

 前述の不要代謝産物の話に戻りますが、この『代謝産物』が東洋医学では、『気』に相当します。『気』については、当院のブログ『気とは?』をご覧下さい

 『気』は、現代医学での血液から造られます。解かりやすくご説明すると、血液の中には『酸素』と『二酸化炭素』が溶け込んでいて、肺で取り込まれる酸素は『身体に良い気(代謝物)』、肺から排出する二酸化炭素は『身体に悪い気(不要代謝産物)』になります。

 この不要代謝産物の滞りが、東洋医学での『気の滞り』に相当し、血液やリンパ液の流れ、身体の中の臓器の働きの抑制などを招きます。

 鍼灸治療では、このような不要代謝産物を、鍼(ハリ)やお灸で、血管を拡張させたり、痛みや熱さを脳など身体に刺激を与え、自律神経(交感神経・副交感神経)に作用して、身体の治癒力を高め、身体を改善させます。

 

ガングリオンの治療効果

  ガングリオンとは、主に関節周辺に発症しやすい良性の腫瘤のデキモノです。

 関節には、関節の間に関節包というものがあり、その中に関節の潤滑液となる滑液により、関節が滑らかに働きます。

現代医学の病理所見では、腫瘤の中は、ゼリー状の滑液が入っています。 原因は、滑液の産生異常ともいわれていますが、実際には、まだよく解かっていないようです。

 東洋医学的診断では、気滞血瘀と考えます。いわゆる、身体の代謝(血液や体液など働き)の衰えによることが原因になります。

 気滞血瘀の日常の原因としては、身体の冷え、打撲や外傷、過労などがあげられます。

当鍼灸治療院では、 

                 『標(ヒョウ)治』として、腫瘤の部分に『鍼(はり)』や『お灸』による治療

      『本(ホン)治』として、身体の冷えや疲労の予防改善を目的とした施術

を行ないます。

 ガングリオンの1回の施術の結果による

『治療前』 と 『治療後(6日後)』の画像を、

当治療院のホームページのトップページの【治療効果(画面の上の右端)】に掲載しています。

 この病気は、再発が多いということのようですが、『本(ホン)』とする冷えや疲労などの日常的な原因の改善が、再発予防につながると考えます。

 

当治療院の『標』と『本』及び施術時間について

 東洋医学では、

      『標(ヒョウ)』とは、病気の表面的な症状

      『本(ホン)』とは、病気の本質(原因)

といい、治療方針に関わってきます。

 当治療院では、

                               初診時 ⇒ 病状についての『原因』『予防方法』

                               2回目  ⇒ 初診時の問診でお聴きした事についての東洋医学的診断の結果

のご説明を、施術前に行なっています。

 患者さまの身体の状態は、皆異なっていますので、病気についてのご説明や施術時間は、当然ながら異なってきます。

 慢性の病気(冷え性や内科的疾患など)の患者さまの場合は、『標』の治療(肩こりや痛みなどの治療)のみを中心とした患者さまよりも、病気に対するご説明や施術時間が長くなります。

 長くなる理由は、『本』の治療(本治)は、多くは日常の生活から発生している慢性的疾患のため、次回の鍼灸治療までご自宅でご自身の病気の予防を行って頂くことで、病気の抑制・症状の軽減・治療回数の減少を目的にご説明を行なっています。

 慢性疾患(冷え性や消化器官疾患など)の『本』の改善には、まずはご自身の身体の状態を知ることが大変重要になります。

 『標』の症状【肩こりなど】は、比較的短期間(1~数回)で解消しますが、『本』の症状(冷え性など慢性的疾患)の場合は、定期的な治療回数が伴ってきます。

 より病気の改善を高めるには、患者さまが病気についてご理解して頂くことが大切と考えております。

 実際に、ご自身の身体の状態を理解していただいて、ご自宅で予防や生活改善を行なっている患者さまの症状は、鍼灸治療と併用することで、改善度が高まります。

 また、『灸あたり』などの鍼灸治療後の倦怠感やめまいなどの予防に、後揉法という軽いマッサージを、時間にゆとりがある患者さまに行なっています。

 通常の強い力で行なう血行改善を目的としたマッサージと違い、『鍼(ハリ)』や『お灸』の効果で血行が改善されますので、当治療院の後揉法は、軽く血流を促す程度で行なっています。

  ちなみに、背部(背中)の『お灸』は、『本』の慢性疾患の改善には、大変よい治療手段になります。

 

 

 

 

お灸の効果

 患者さまから、初診時に『この本に書かれているツボは、自分でお灸をする場合には効きますか?』という質問があります。この問いには、何とも言えないのが、正直の感想です。

 というのは、『書籍やインターネットなどに掲載されている一般の方々向けのツボ』は、現代の方々に分かりやすいように、多くは、現代の病名に対応して書かれています。あるいは、鍼灸でいわゆる『特効穴』と言われるツボがあげられています。

 しかし、本来ツボは、『弁証』などの東洋医学の診断方法で患者さまの身体を診て、どの『ツボ』がこの患者さまに最適なのかを選択すべきものと考えます。あくまでも、現代の病名は、現代医療(西洋医学)に適応した診断となります。

 現代医学の治療の大半は、病気になって効果が発揮する治療方法になります。つまり、ある基準や複数の条件を満たさなければ効果がないことになります。

 一方、病気になっていることが治療基準とする現代医学とは異なり、東洋医学は、健康を基準に考えていますので、病気になっての治療のみならず、現代医学の病気の状態になる前の状態『未病』の改善(=予防医学)にも適応します。

 ところで、東洋医学には、『標(ひょう)』と『本(ほん)』という言葉があります。『標』とは、表面に出ている症状であり、『本』とは病気の原因の本質を言います。特に、慢性的な病気や症状は、『本』の治療が必要になります。

 従いまして、はじめに述べました『この本に書かれているツボは、自分でお灸をする場合には効きますか?』についての回答は、『標』のような対症療法には効果があるかもしれませんが、全ての人に効果があるとは限りません。特に慢性的な冷えなどの症状の改善の治療には、『弁証』などの東洋医学的診断方法などを用いて、病気の原因を判断することも大切になります。

 また、ご自宅でのお灸の効果を上げるには、数回の問診などを行ない、『弁証』という診断方法による東洋医学に精通されている医師や鍼灸師からのアドバイスが重要になります。

 更に、ご自宅でお灸をすえる場合は、第三者にして頂くことが、より効果が上がると考えます。

 身体を修復するのは、活動している時よりも安静している時の方が高いからです。活動して覚醒している時は、自律神経の交感神経が優位になっています。一方、自律神経の副交感神経が優位の時が、身体の回復には最適の状態です。

 しかし、自分自身で行なうお灸(セルフお灸)は、第三者からお灸をやって頂くお灸よりも交感神経が優位に働いている状態です。より身体の改善を考えるならば、第三者からやって頂くお灸のほうが、副交感神経が優位になり、改善の効果を上げることになります

 昭和のお灸の名人『深谷伊三郎』先生は、『経穴(ツボ)は効くものではなく、効かせるもの』という名言を残されています。この意味は、効果のあるツボを選び、そのツボに適度な刺激を与えることが大切であることを述べています。

 ご自宅でお灸をすえる場合は、自分の身体の状態を、客観的に知ることが、より効果を上げる秘訣になります。

 

『気』とは?

 鍼灸師の方が、患者さんや鍼灸師同士の会話で、『気の流れを調整する』、『気を廻らす』、『気を高める』などの言葉を使っている事を、時々耳にします。『気』について調べると、『生命エネルギー』のことをいいます。正直言って、現代の一般の人たちには、不可解な言葉であり、すんなり納得できない表現と思います。実際に『気』とは、目に見えるものではなく、実態がつかめないモノだからです。

 また、鍼灸治療が普及しない原因として、現代医学のインフォームドコンセントの観点から、鍼灸師の方々が、理解し難い古人の使っていた言葉を、現代の人々にそのまま伝えるということで、現代に合った表現に変える努力をしなかったことが普及しない一つの原因と考えられます。

 これから鍼灸治療を広めていくには、このような現代の人たちにも理解できるような説明や表現方法を見直していく必要性があると考えます。

 

 東洋医学の『陰陽論』の考えで、下記に示すように、相反する『陰』と『陽』が、相互関係を維持することで、自然界(身体)のバランスをとっているという考え方があります。

  【陰】⇒ 下、内、夜、女、老、内側、裏、胸腹、下部、五臓、寒冷、慢性、暗、静、血、津液、液体

  【陽】⇒ 上、外、昼、男、幼、外側、表、脊背、上部、六腑、温熱、急性、明、動、気、気体

 

上記の陰陽論から、『気』の性質は、【陽】のグループに属し、温かく、機敏で、動きがあるイメージが出来ると思います。

 また、『気』の作用には、下記の作用があります。

    温煦作用・推動作用・気化作用・固摂作用・防御作用

 

 さて、現代医学には、生体の機能とそのメカニズムを解明する『生理学』という学問があります。この生理学を活用して、『気』についてご説明します。

 身体の仕組みでは、食べ物は、口から入って、食道 ⇒ 胃 ⇒ 小腸 ⇒ 大腸 ⇒ 肛門(膀胱) の順に動いていきます。この過程で、食べ物は、下記のように色々な臓器でさまざまな栄養素に分解されます。

  胃 ⇒ アルコール

  小腸 ⇒ 水分、電解質(Na、K、Ca、Mgなど)、糖質、蛋白質、脂質、ビタミン(A、D、E、K、B1、B2、Cなど)…

  大腸 ⇒ 水分など

 そして、栄養素は摂取したままの形では身体の中に吸収されないので、下記のような消化酵素によって適度に分解され、各臓器から吸収されます。

  口 ⇒ 唾液

  胃 ⇒ 胃液

  膵臓 ⇒ 膵液

     小腸 ⇒ 腸液

 このような食べ物を様々な成分に変化させる働きが、東洋医学の『気』に相当します。

 また、その他の臓器には、下記のような働きがあります。

    腎臓 ⇒ 水分・電解質の調節、体液pHの調節、ホルモンの産生や調節、代謝産物の排泄

    肝臓 ⇒ 腸で吸収された物質を合成・貯蔵、薬物や毒物の解毒など

    血管 ⇒ 全身に栄養素や白血球などを運搬する

 このように、様々な臓器で行なわれる働きが、東洋医学の『気』の作用に相当します。

 従いまして、『気を高める』とは、様々な身体の各機能を高めたり代謝を上げることで、下記のような『気の性質』である

   ◇暖かさ(温煦作用

   ◇機敏な動き(推動作用

   ◇臓器に合った成分に変化させる働き(気化作用

   ◇血液中の血小板(固摂作用

   ◇血液中の白血球などの免疫系(防衛作用

が現代医学に相当することになります。

  このように、現代では分かりづらい『気』という目には見えないモノなど、『生理学』という現代医学のツールを利用することにより、鍼灸治療が、一般の方々に受け入れやすい環境になると考えています。