これからの冷房による冷え性対策(No.3) /治療法

前回のブログ『これからの冷房による冷え性対策(No.2)』では、『慢性的な冷え性』の改善・解消方法は、『(現在発症している症状)』の『冷え』と、『(症状を起こしている原因の大元)』の『自律神経(『陰陽の調整』)』を同時に、治療と生活改善が不可欠と述べました。

 

鍼灸治療では、冷房での『冷え』は、病気の原因となる外因(※1)の『寒』により、身体を温める作用(=温煦(おんく)作用)の低下を生じさせていると考えます。

 

(※1)時代の変化による変わりつつある外因

⇒本来、自然界の気候の変化(風・湿・暑・寒・燥・火)からの外感を病気の原因としますが、近年の技術の発展で作り出されたエアコンの普及で、数千年前からの情報の蓄積による東洋医学の考え方において、自然界の要素から人工的要素に外感が変化してきています。

 

 

当治療院での『冷え』に対する鍼灸治療の方法は、冷えを感じている手足などの末梢の部位および腹部・肩背部・腰部などの『標』に対する治療『標治』と、身体の深部の『陰陽の調整(現代医学に置き換えれば自律神経の調整)』とする『本』の治療『本治』を行います。

『本治』の具体的内容は、『陰の要素』である『血(≒血液)』及び『津液(身体の中に存在する体液やリンパ液などの液体)』『陽の要素』である『気』(※2)の調整になります。

(※2)『気』については、ブログ『『気』とは?』をご覧下さい。

 

また、身体を温めるためのお灸『温灸(棒灸)』を用いて心地よい暖かさを与え体温調整の治療を行います

 

鍼(はり)とお灸には、皮膚などの組織器官に一定の刺激を与えて、『自律神経』や『血管』などの働きを調整する作用があります。

 

 

尚、一般の方(お灸の未経験者の方)には、お灸はとても熱いものだと感じていらっしゃいますが、お灸には心地よいお灸もありますので、インターネットの動画にて、『温灸 棒灸 使い方』などの文言で検索してご覧なると、鍼灸治用への抵抗感が薄れて、病気に対してのご本人の治療の選択肢が広がると考えます。

 

生活改善では、外部からの『冷気』を防ぐことはもちろんのこと、病気の原因とする『病因』のうちの『不内外因』でもある『睡眠・バランスの良い食事・ストレスの解消・喫煙・飲酒など』に注意を払うことが、症状の解消・改善につながります。

 

『慢性の冷え性』は、肩こりや腰痛などに比べて、改善へ至るまでに、時間が掛かります。

『鍼(はり)』と『お灸』を用いて、定期的な治療を行うと、患者様ご自身で身体を温める作用(温煦作用)が強くなり、『冷え性に対する不快感』が、かなり改善出来ます。

ご自身の冷え性が、職場のなどの環境をよって引き起こされ、尚且つ、改善出来ない場合は、特に早期の治療および生活改善が、とても重要です。

 

これからの冷房による冷え性対策(No.2) /治療方針

一般に、冷え性の方々が行っている『冷え性予防・解消』は、靴下や手袋などで身体を覆(おお)って、身体の中の熱を逃がさない、あるいは、外部の『冷気』から身体を防ぐ方法です。

 

しかし、この方法だけでは、おそらく慢性的な『冷え性』は、解消できないでしょう。

 

東洋医学で、病気に種類には、『標(症状)』と『本(症状の原因)』の2つに分類出来ます。

(※『標』と『本』については、ブログ『東洋医学とは・・・』をご覧下さい。)

 

前回のブログ『これからの冷房による冷え性対策(No.1)』でご説明したように、冒頭の『冷え性対策』では、『慢性的な冷え性』は、解消されません。

というのは、『標(症状)』という『冷え性』は、身体の異常が生じた結果、身体の表面に現れた現象です。

 

つまり、身体の異常とは、身体の内部の『陰(冷やす作用)』と『陽(温める作用)』のバランスが崩れ、現代医学で呼ばれる『自律神経のコントロール』の制御異常です。

『慢性的に冷え性』を解消、改善するためには、前回のブログ『これからの冷房による冷え性対策(No.1)』でご説明したように、『標(冷え性)』という表面的な症状と、『本(自律神経)』によって『標(冷え性)』の症状を発症させている本質の原因を同時に治療、あるいは生活改善を行うことが不可欠になります。

ご自身で、『冷え性の改善』を行うポイントは、

身体を温める作用を強くする(運動・食事など生活改善)

身体の体温調整を行う『自律神経』を正常な状態に戻す(肉体的及び精神的ストレスの解消)

を2つ同時に行うことです。

 

 

これからの冷房による冷え性対策(No.1) /メカニズム

次第に、暑さが高まりつつあります。

冷え性の方々には、冬場とはまた違った辛い季節になってきました。

 

『冷え性の方』の真夏のエアコン(冷房)による『冷え性』対策は、冷えを強く感じて本格的に行いますが、実は、今の時期から行わないと、『冷房』の影響を強く受けてから予防を行なっても、なかなか改善しにくいです。

というのは、『慢性の冷え性』に悩まされている方は、体温調整の機能が一般の方よりかなり低下した状態で、尚且つ、エアコンなどの外部からの『強い冷気』を上回る回復能力(自然治癒力)がないために、『冷え性の改善』が期待できません。

 

以上のことにより、冷え性』を強く感じる前から、治療や予防の対処が必要になるわけです

 

冬場の『冷え』は、外出する際は、重ね着など着込むことで、身体全体を冷えから守ることが出来ました。

しかし、初夏から夏に向けての冷房による『冷え』は、下記の点で大きな違いがあります。

☃冬⇒室内≪暖≫・屋外≪冷≫

⇒室内≪冷≫・屋外≪暑≫

人それぞれで、温度の感じ方は異なっています。

冬の場合は、寒さに対しては、暑がりの方、『冷え性』の方と同様に、適度の暖かさを好みます。

しかし、夏の季節において、暑がりの方は、『冷え性』の方よりも、非常に強い『冷え』を好みます。

そして、暑がりの方は、更に、室内の温度を下げて、『冷え性の方の症状』を悪化させます。

 

この様に、集団生活を送る中では『冷え性』の方が、夏場に人それぞれで感じる温度の格差により、『冷え』に悩まされます。

 

 

では、東洋医学の『陰陽学説』と病気の原因とする病因の『外因』を基に、現代医学も取り入れてご説明致します。

『陰陽学説』とは、簡単に言うと、相反するモノがお互いに調和することになります。

 

『陰陽学説』では、『暑い(温める)』は『陽』『寒い(冷やす)』は『陰』に分類し『陰』と『陽』のバランスが取れている状態を『平』とします。

また、この『平』の状態を、人間の身体が良好にバランスが取れている状態であると考えます。

 

ところで、これら(『暑い(温める)』と『寒い』(冷やす))は、反対の性質を持ちますが、身体が『暑い(陽)』と感じると、身体を『冷やす(陰)』ために汗をかき、身体を冷やす機能が働きます。

すなわち、『陽』という性質の『暑さ』が強まることを、一定の状態(『平』)抑制させるために、『汗をかく』という動作を行い、『冷やす』という『陰』の作用を強めることで、健康状態を保とう(『平』)とします。

この様に、『陽(温める)』と『陰(冷やす)』は相反性質ですが、お互いを強弱することでバランスを保ち、身体を『陰陽の作用』で維持しています

 

 

現代医学では、このようなことを『ホメオスタシス(恒常性)』と呼び、上記のような体温調整を行うのが、『自律神経(交感神経・副交感神経)』などになります。

 

ちなみに、『汗』は陰陽学説では『陰』に属します。

 

つまり、上記の仕組みで示したように、夏の『冷房による冷え』と冬の『外気温による冷え』の対策は、外因』である『冷え』を解消することであり、東洋医学では『陰陽のバランス』、現代医学では『自律神経』を、上手く調整することが、『冷え性』の改善になります。

特に、夏の冷房による冷えは、冬場の冷えに加えて、室内と屋外の気温の格差が増大し、『自律神経』を大きく乱し、色々な症状を発症させます。

更に、湿度の高い梅雨の冷房も、『慢性の冷え性』の増悪し、『自律神経の乱れ』や『むくみ』を促進させてしまいます。

 

鍼灸治療を受けるタイミング

一般の人には、身体の不調を元に戻す能力『自然治癒力』が備わっています。

また、性別、年齢、生活習慣で、身体に受ける感覚が、人それぞれで異なっています。

 

鍼灸治療を受ける患者さんの治療タイミングには、下記のように大きく2つに分かれます。

①症状が重くなり、我慢できない状態になって、治療を受ける方

②症状が比較的軽く(安静時に不調の症状がない)、あるいは苦痛が起きる前に、治療を受ける方

 

そして、上記①、②の詳細は、

①の傾向には、体力に自信がある方、月経周期の苦痛を経験することがない男性、比較的若い方、自分に合った治療法が見つからないために長期間患っている方、身体を治すことよりも生活や仕事などを優先している方など

②の傾向には、女性、長期にわたって病気を患っている方あるいは患った経験を持った方、体力に自信がない方など

大まかに、大きく2つに分類できます。

 

いわゆる、

①は、現代医学的治療タイミング型

②は、予防医学的タイミング型

といったところです。

 

ところで、現代医学では、病気の基準は、検査等を行って、ある一定の状態に悪化した状態を病気を考えます。

しかし、東洋医学では、病気の基準は、『健康の時点(特に悪いところはないと感じる状態)』から身体の不調を感じ始めたころからを示します。

すなわち、現代医学の病気になる手前の状態も、東洋医学では、病気と考えます。

従って、東洋医学を活用すると、いわゆる現代医学での病気の手前で未然に病気を軽減したりや防ぐことができます。

 

 

話は戻りますが、上記①と②を更に比較すると、下記の通りの特徴があります。

①苦痛や不調などの増大により、回復力(自然治癒力:自律神経系+免疫系+ホルモン系)が落ちて、身体の回復の遅延が発生する。

⇒結果的に回復に時間が掛かる仕事や生活に支障が生じる

 

定期的治療の時間を要するが月経痛などホルモン系や自律神経系を原因とする症状などの慢性的症状に対する軽減、及び苦痛や症状が短期的に軽減・解消ができる。

◆回復力・自然治癒力が①よりも②の方が高いため、より快適な生活が送れる

 

 

結論として、自分自身の身体に対する健康への意識、あるいは身体の変調への改善・回復を、どの時点で行動に移すかということが、大変重要になります。

単に、『病気や症状を軽減・改善』を目的であるならば

①の現代医学的治療タイミング型(痛みや不調が出てからの対症治療)

『健康や美容など身体全体の免疫・代謝向上(元気になりたい!)』を目的ならば

②の予防的治療タイミング型(痛みや不調が出る前の予防治療)

になります。