看護師と東洋医学

最近の医学を取り巻く環境は、日々進歩を続けています。

また、現代医学は、以前と比べ、予防医学を取り入れ始めてます。

しかし、看護病棟では、予防医学が取り入れられていることはほとんどありません。現場サイドからの視点から、緊急性を重点においているので、仕方がないのかもしれません。

 

話は変わりますが、これまで、私が鍼灸の勉強会に参加した時、参加メンバーには、鍼灸師は当然ですが、医師、薬剤師などの医療関係者もいらっしゃいましたが、看護師さんの参加は、仕事で鍼を扱うことがない作業のためか、見かけた記憶はありません。

また、東洋医学には、患者さんの身体の状態を知る手段として、『四診(望診、聞診、問診、切診)』というものがあります。この『四診』をもとに、東洋医学での診断『証』ということが出来ます。看護師さんが日頃の作業で、東洋医学的診断を決めるための患者さんの『身体の情報』が入手出来ます

 

そして、予防医学には、東洋医学は最適な手段の一つと言えます。看護師さんの日頃行っている患者さんの身体の情報が、予防医学に使えます。事前に病態が予測できると、作業の効率化が向上し、後手後手に回る作業の軽減になります。

これまでは、医療現場では、医療機器などのハードの発展について注目されてきましたが、『身体の情報』をうまく使い、人材育成というソフトに目を向けることも医療の発展に繋がると思います。

現在、東洋医学的診断『証』を用いた治療を行っている病院は、ほんの一握りです。看護師さんが東洋医学を学ぶメリットは、看護師さん自身の身体、あるいはその家族、周囲の方々の身体のケア及び予防にも活用でき、より一層の医学の発展になると考えます。

施術後の倦怠感

 鍼灸治療を行なっていると、患者さまによって異なりますが、治療1~数日後に、倦怠感を受けることがあります。

 東洋医学には、この倦怠感には、大きく下記の2つの考えがあります。

   ①オーバードーゼという過度の刺激による倦怠感

   ②瞑眩(めいげん)反応あるいは好転反応による倦怠感

 ①の原因は、施術のやりすぎになります。マッサージなどで必要以上の圧力や力が加わることで、筋肉などの身体に負担が掛かり、倦怠感が生じます。

 ②の原因は、身体が修復する、あるいは改善するために、身体の治癒力が高まることで、身体に変化が生じることによる倦怠感です。

 はり()やお灸の治療は、身体の痛覚・温度覚・触圧覚などを経て、神経に刺激を与え、運動神経や自律神経を用いて、現代医学でいう自然治癒力(自律神経系・内分泌(ホルモン)系・免疫系)を高めます。この時に、身体の変化により倦怠感が生じことがあります

 実際に、身体の病位(病気の深さ)が重い方、長く患っている方などは、少なからず倦怠感を生じる傾向にあります。

 ②の倦怠感のメカニズムは、解かりやすくご説明すると、下記の条件が関わっていると考えます。

   ◇身体を治す力であるエネルギーは、患者さま自身が持っている体内の栄養を基に、作り出され、利用される

   ◇長く病気を患っている方や消化器系を患っている方などは、身体を修復するエネルギーが乏しい

      ※東洋医学でいう腎虚、血虚、脾虚など根本に虚証を持っている方が、倦怠感を受ける傾向にあります。

 鍼灸治療での倦怠感を無くす方法としては、治療回数を増やし、刺激量を減らすことで改善できますが、患者様の経済面、仕事や生活面などによる治療時間の制約などの観点から、実際には、少ない回数による治療効果が優先されます。

 しかし、鍼灸治療を重ね、症状が改善されるに連れて、倦怠感も減少していきます。身体の修復に費やす体内エネルギーが減少する為と考えます。

 当院では、できる限り倦怠感が出ない、あるいは抑える努力をいたしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現代医学と東洋医学の大きな違い

東洋医学において、万物の中には、互いに相反する2つのモノが、互いに依存しあっているという『陰陽論』の考えがあります

上⇔下、表⇔裏、明るい⇔暗い、速い⇔遅い、熱い⇔冷たい 男⇔女、天⇔地  など

 

例えば、『寒い』と『暖かい』という言葉があります。『寒い』という状態が次第に弱くなると、『寒い』から『暖かい』に変化していきます。逆に『暖かさ』が減ってゆくと、いずれ『寒さ』を感じやすくなります。

このように、東洋医学では、相反する意味合い持った2つが、互いに存在すると同時に互いに変化しながらバランスを取るという作用を、治療に反映させています。

また、この相反する2つの性質の変化の量を『虚(減or少)』、『実(増or多)』で表します

 

(増or多)  (+)

―――――――――――――()※『虚』でも『実』でもない

(減or少)  (-)

 

最近、現代医学では、『1℃あげると5倍免疫力が上がる!』とも言われ、体温を上げることが大切であることを述べています。

しかし、東洋医学では、体温を上げることで治癒力が上がることは、数千年前から分かっており、上記の『陰陽論』の考えから治療に反映させています。但し、ただ単純に体温を上げれば身体に良いわけではありませんが。

 さて、表題に上げています

『現代医学と東洋医学の最大の違い』は、治療のタイミング

になります。

現代医学の基本は、病気がある程度の進行がないと治療が発揮できないという点です。

予断ですが、現代医学を発展させているのは、先端技術をよくあげますが、実は、治療の基本の1つには、現在TOKIOの長瀬智也さん主演の『フラジャイル』で取り上げられている病理学の精度が重要になります。

病院の診察で、検査では何も出ない状態では、『病気になって、あるいは症状がひどくなってきたら、病院にいらして下さい。』とおっしゃられた経験の方は、結構いらっしゃると思います。検査で病気の原因が分からなければ、治療方法が決まらない訳です。

しかし、最近は、東洋医学に沿った予防医学が次第に病院の治療に取り込まれてきています。

では、東洋医学の治療タイミングとは、病気が発症を基準としている現代医学とは異なり、

 東洋医学は、健康である状態を基準に、治療方針を考えます

健康とは、上記の陰陽論で述べた『平(※虚でも実でもない)』状態になります。この状態が、維持できなくなった、あるいは、身体に変化が出てきた状態(※『虚』あるいは『実』に傾いている状態)から治療方針が決まります。

従いまして、病気の種類によりますが、病院に行って病気の治療を行なう苦痛を伴う前の段階で、東洋医学での治療が有効の場合があります

東洋医学の鍼灸やマッサージなどは、体調の調整に効果のある医術です。

寒さによる痛みや痺(しび)れ

本日は、非常に強い寒波のため、大雪で非常に寒い日になっています。

この様な時期は、身体に痛みや痺れが強くなる傾向にあります。

東洋医学では、寒さにより『気血』がスムーズに流れない状態の原因の性質を凝滞(ぎょうたい)性と呼びます。

『気』とは、栄養のある液体『血(けつ)』(※現代医学では血液に相当)を身体の個々の臓腑(五臓六腑)などに送り、それぞれの機能を働かすために、『液体(陰)≒血』⇒『気体(陽)≒気』に変化したモノです。

従いまして、この『気』及び『血』の流れが滞ると、身体に栄養が十分に行き届かなくなり、『陽』の性質とする身体の温かさを失う、あるいは『陰』の寒さが強くなることで、『痛み』や『痺れ』が生じます。

この度の寒波のように、強い冷えで『痛み』や『痺れ』が生じている場合は、『寒』の外因を防ぎ、生活環境の不内外因の変化で、症状の改善・軽減することができます。

 

 

 

加齢と美容と老化に対する東洋医学的アンチエイジング

 

加齢とは、生物が生まれてから死ぬまでの時間的経過を指しますので、人にとって加齢を抑えることは出来ません。

しかし、『皮膚』、『骨』、『筋肉』、『血管』、『脳』、『心臓』などの働きを活性化することで、老化を抑えることが出来、美容にも効果が発揮出きます。

30代以上の方、あるいは、少なくとも、健康な身体であれば、現在の状態を保つことが重要です。

いわゆる現代医学で用いられる『皮膚年齢』、『骨年齢』、『血管年齢』などの生理的働きを、如何に低下させず、維持させることが大切になります。

例えば、『皮膚年齢』の場合、20歳頃を境に『ターンオーバー』が28日以上掛かる状態になっていきます。40歳であれば約2倍掛かると言われます。

身体の各部位(皮膚や血管など)を

  実年齢、もしくはよりも若い状態にするには、東洋医学では、『五臓六腑』や『陰陽』などの調和がとれている『健康な状態』

にすることです。

 

 

ところで、『五臓』とは、『肝』、『心』、『脾』、『肺』、『腎』を指し、現代医学での『肝臓』、『心臓』、『脾臓』、『肺(臓)』、『腎臓』に相当はしていません。『肝≠肝臓』、『心≠心臓』、『脾≠脾臓』、『肺≠肺(臓)』、『腎≠腎臓』ということになります。

 東洋医学での『五臓』は、現代医学に置き換えると、『肝』≒『血液などに関する働き』、『心』≒『心機能や脳などの働き』、『脾』≒『消化器系などの働き』、『肺≒呼吸器系の働き』、『腎≒泌尿器・生殖器などの働き』といった身体の中の働きを意味しています。

現代医学での『肝臓』、『心臓』、『脾臓』、『肺(臓)』、『腎臓』は、臓器そのもの【モノ】を指しています。

従いまして、東洋医学では、『五臓六腑=身体の中の働き』であり、現代医学の臓器そのもの【物体】を表している訳ではありません。

なぜ、このような違いが発生した理由は、解体新書を翻訳した『杉田玄白』が原因と言われています。

『五臓六腑』という言葉は、中国から日本に伝えられました。しかし、オランダ語で書かれた解剖図の名称(臓器)を、当時の日本では、それ(臓腑)に該当する言葉がありません。そこで、『杉田玄白』が、『東洋医学』から『五臓六腑』を引用したことで、上記のような『働き≠臓腑』の違いが発生することになりました。

『五臓六腑』とは、身体の『臓器自体(モノ)ではなく、働きである』ことを記憶に留めて置く事で、『東洋医学』に関わる美容・健康などの予防学を理解するのに役立つと思います。『五臓六腑』を現代の臓器(モノ)とする考えは、東洋医学の理解を混乱させます。

 

 

学校の教科書に掲載された事柄について少し述べましたが、『鍼灸』について少し記述された有名な著書もあります。

江戸時代の儒学者『貝原益軒』によって、健康についての日常生活の心得を書いた『養生訓』です。『鍼(はり)』や『お灸』について、少し書かれています。

また、俳人、松尾芭蕉による「奥の細道」の中で

「月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。・・・笠の緒付かえて、三里に灸すゆるより、松島の月先心にかかりて云々…」
という文が記載しています。『三里』とは、足三里というのツボになります。

ご参考まで。

 

 

話は戻りますが、人は生まれてから現在まで、身体の外部から色々な影響を受けて、生活しています。老化を早める原因であるリスクを回避あるいは、改善することが、老化防止になります。

そのためには、まずは、自分自身の身体の状態、生活環境を十分に理解することが、美容、健康になり、いわゆる『若返り』になります。身体に良いことを行なっても、不健康になる環境を変えなければ、『若返り』は出来ません。

『病気は気から…』といいますが、東洋医学の観点から、実際の臨床でもこの言葉は反映され、慢性的な症状の改善につながります。

『気』については、当院ブログ『冷え性の改善の道(東洋医学編)』を閲覧ください。

 

病院の検査で、ある一定の状態になって病気とする現代医学とは異なり、慢性的な症状などの改善や養生については、東洋医学を精通している医師や薬剤師、お近くに鍼灸師などにお尋ねになると、現在の身体の改善のアドバイスを受けることが出きます。

また、『お灸』や『はり(鍼)』は、お年寄りがするものと思っている方がいらっしゃいますが、本来、年齢に問わず、身体の調整を行なえる手段の一つであり、血行や免疫力の促進、神経に対する刺激による機能回復などを目的とした改善を促すことが出きます。

身体の衰えを感じ始める30歳頃から健康を意識した生活を行なうことで、実年齢の若い状態を維持することが出きます。

身体の衰えを感じる前に、気になる部位に対して気を掛ける事が、大変重要になります。

もう少し踏み込んだ内容は、当院ブログ『東洋医学の視点からのアンチエイジング』をご覧下さい。

読書の効果

一週間ほど前、ある方との対話の中で、読書をするきっかけがありました。『読んでみます・・・』と返答。会話中のその場での社交辞令でなく、有言実行です。

翌日、うろ覚えの題名『・・編・』で検索し、本を購入しました。東洋医学など仕事に関する文献はよく目を通しますが、ここ十年以上、実用的な書籍以外のモノは、読んでいませんでした。

 

ところで、読書がもたらす現代医学的効果には、

・ネガティブ思考の改善

・加齢に伴う認知機能の改善

・感情が刺激されることによる脳の作用(集中力・記憶力・思考力など)の活性化

などが、あげられます。

 

一方、東洋医学では、病気の原因の一つに、『内因』というモノがあります。過度の感情『喜・怒・思・憂・悲・驚・恐(七情)』を受けることで、身体の変調を来たすと考えます。

上記のことを踏まえて、読書には、この七情の感情を整える作用が考えられます。

また、読書による東洋医学的身体の調整のしくみは、大まかに述べると、

【七情の感情の安定化】 ⇒ 【五臓六腑に対する調整作用】 ⇒ 【体調の改善】

になります。現代医学に置き換えると、『自律神経』や『ホルモン』など調整による免疫向上になります。

 

実際、読書し始めると、本の中の世界に入り、心が落ち着きます。

また、読書により共通の内容を共有することで、人との会話(コミュニケーション)の幅が広がります。

 

 

 

 

 

 

 

 

老廃物とミトコンドリア

人体には60兆の細胞があります。

細胞は、グルコース(ブドウ糖)を取り入れ、酸素を用いて、二酸化炭素と水を放出します。この過程で、生体エネルギーであるATP(アデノシン三リン酸)を産生します。このATPを産生するものが、高校生の生物の教科書にも掲載されている『ミトコンドリア』です。

ミトコンドリアは、ATPを生成する時に熱も産生しますが、機能が低下すると、活性酸素を生成させます。例えると、木材などを燃やすと炎が出ますが、良く燃えないと不完全燃焼を起こし黒い煙が増します。この煙が『活性酸素』に当たります。

人間は、呼吸することで一定の『活性酸素』を発生させますが、そのほかに、ストレス、紫外線、飲酒、喫煙などが原因でも『活性酸素』を発生させます。

また、老化の原因のひとつには、『活性酸素』が原因と言われています。『活性酸素』は、体内の細胞を酸化し破壊し、皮膚のたるみ、癌、動脈硬化などの原因を発生させます。

よって、『アンチエイジング(老化予防・抑止)』には、細胞の活性化が大切になります。身体が元気な状態であれば、『活性酸素』を発生しにくい状態になる訳です。それと同時に、身体の働きに不要になった物質『老廃物』を、呼吸、排便、排尿、発汗の生理作用で、身体の外へ排泄させることが大切になります。

東洋医学での健康維持の鍵として、①気血津液(血液や体液など)をスムーズに流れる環境、②身体の中の各々の臓器の円滑な働き、③寒熱(身体の適度な温かさ)があげられます。

まず、①についての説明です。身体全体に栄養を運ぶものは、カラダの中の血液あるいは体液などになります。それらの流れが滞ると、その行く先の身体の部位に栄養が届かなくなり、結果その細胞は衰えていきます。また、身体にとって不要なモノ(老廃物など)は、血液やリンパ液などで運ばれ、排泄されます。これも流れが滞ると、身体の内部に蓄積してカラダに悪影響与えます。カラダに流れる物質がスムーズに流れることが健康につながります

②についての説明は、東洋医学には、五臓(肝・心・脾・肺・腎)六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)の働きがバランスよく保たれていることが健康である事の1つと考えます。いわゆる内臓の働きが順調に働くことが健康というわけです。

そして、③においては、身体の各部位の表面(皮膚)の温度及び身体の中の温度が、適切な温度であることが、健康のバロメーターになるということです。

話は戻りますが、ミトコンドリアの特徴は、飽食状態であると、働きが鈍くなるといわれます。従いまして、ミトコンドリアの働きを上げるには、程度の空腹を与えることが、よりカラダの生命エネルギーが上がり、健康的な身体にしていくことになります。また、このことはエネルギー消費も上がり、ダイエットにもつながります

これと似たように、神経の特徴も、適度の刺激を与えないと働きが鈍くなります。この場合も、神経細胞のミトコンドリアが影響を与えているのだろうと考えられます。

筋肉には、白筋(瞬発力のある筋肉)と赤筋(持久力がある筋肉)の2つがあり、近海の魚(ヒラメやキスなど)は白筋が多く、遠洋の魚(マグロなど)は、赤筋が多く含まれます。

そして、ミトコンドリアが多く含む筋肉は、持久力があり、また身体を支える筋肉でもある『赤筋』です。一般に、男性は白筋が多く、女性は赤筋が多いです。このことから、女性が男性よりも長生きする理由の1つとして、ミトコンドリアの量が影響しているのでは?と言われています。

よって、赤筋を増やす事が、『アンチエイジング』に効果を上げる方法になります。つまり、有酸素運動で赤筋の筋肉を増やし、適度の『空腹の時間』を作ることが、健康につながることになります。

そして、『ミトコンドリアの働きを活性化する』ことで、上記の①~③という健康の条件を、改善あるいは維持することができることになります。 

ミトコンドリアは、東洋医学の視点から考察すると、『気を産生する物質』と考えます。

 

一般に、現代(西洋)医学と東洋医学は、全く関係のない学問と思われがちですが、実は、現代医学は、遥か数千年前~現代に及ぶ時間を経て伝えられてきた東洋医学を、現代医学の発展を用いて証明させている学問と考えることができます

老廃物【多汗症編】

前回のブログ『老廃物とは?』で述べたように、老廃物は、身体の異常を起こさせる原因の一つです。

老廃物には、ただ身体にとって悪いことばかりでなく、下記のように身体の異常の警報装置(危険信号)にもなります。

排便 ⇒ 消化器系の異常

排尿 ⇒ 腎臓や身体全体の異常

汗  ⇒ 身体の臓器の状態の異常

呼吸 ⇒ 心肺機能の異常  など

汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があり、また生まれてからの生活環境で、汗腺の数は人それぞれ異なっているといわれています。

エクリン腺は、全身に分布していて、臭いのないサラサラした汗を出し、頭部の視床下部の体温調節中枢で制御されます。

一方、アポクリン腺は、大部分は腋窩(脇)に分布していて、粘り気のある汗を出し、大脳皮質により制御され、このアポクリン腺は、ワキガの症状の原因にもなり、粘り気のある汗が細菌によって分解される時に、異臭が発生します。

そして、発汗の機能は、大きく分けると、体感上昇に伴って身体を冷やすための発汗(温熱性発汗)と、精神的な緊張による発汗(精神性発汗)があります。

多汗症の原因には、臭いのないサラサラした汗を出すエクリン腺が関与し、全身に大量の汗をかく全身性多汗症と、手の平や足の裏など身体の一部に大量の汗をかく局所性多汗症があります。

また、身体の中の水分調節は、腎臓が大きく関与しますが、多汗症の場合は、発汗量が増えることで、排尿量が減り、尿の質が濃くなることがあります。現代医学では、1日の排尿量が400ml以下になると、乏尿と診断されます。

現代医学の視点からの多汗症の原因は、中枢神経や自律神経の異常、循環器障害、内分泌(ホルモン)異常、代謝異常、精神的ストレスなどがあげられます。

一方、東洋医学では、多汗症は『汗証』の中の症状に含まれ、津液(体内に存在する液体)の大量の汗が洩れ出る状況です

この事から、まず第一に、『気』の作用に『固摂作用(津液や血などが必要以上もらさない働き)』があり、これに関わる臓腑は『脾』『腎』、更に、皮膚と津液に関わる臓腑の『』 の働きに影響が出ると考えられます。

従いまして、多汗症の治療方針では、『脾経』、『腎経』、『肺経のツボが選ばれることが予測できます。

尚、『気』に関しては、当院のブログ【『気』とは?】をご覧ください。

ところで、汗証には、活動の有無に関わらずいつも汗が出ている『自汗』、寝汗の『盗汗』、汗が多量に出る『大汗』などに分類できます。

そして、東洋医学的診断は、下記の点を参考にして行ないます。

◇身体の温度(寒・熱)の状態

◇排尿の量や排尿回数

◇生活状態(食事・仕事など)

◇四診(※現代医学の問診や触診などに相当)による弁証(治療指針)   など

多汗症は、大量の汗をかくことで体温が下がりますので、皮膚が冷えていることが考えられます。

また、東洋医学では、病気の原因である『病因』は、内因、外因、不内外因と考え、上記の問診等を考慮して、各々の患者様にあった治療方針を導きます(オーダーメイド治療)。 尚、『病因』に関しては、当院のホームページの『トップページ』をご覧下さい。

多汗症の治療は、1~数回の施術で改善する肩こり等の治療とは異なり、継続的な鍼(ハリ)やお灸による自律神経系や内分泌(ホルモン)系などの調整と、生活スタイルなどの改善が不可欠になります。

 

老廃物とは?

 近年、病気や健康に関して『老廃物』という言葉が、よく用いられています。

 では、『老廃物とは、どのようなものなのか?』というと、体内で作られた不要代謝産物になります。いわゆる、工場で製品が作られて不要になった残り粕(カス)、あるいは、火が良く燃えない時に発生する煙や一酸化炭素などの不完全燃焼物に相当するものが、『体内の不要代謝産物』になります。

 これら代謝産物(尿酸、二酸化炭素、尿素、アンモニアなど)は、呼吸、発汗、排尿、排便などによって、体外に排泄されます。しかし、これらの物質が、体内に適切に排泄させないと、『むくみ』や『痛み』など、身体に異常をきたす原因になります。

 このように、身体の不要代謝産物を発生させない、あるいは適切に不要代謝産物を排泄させる身体に調節(生活改善など)することが大切になります。

 ところで、鍼灸業界では、『気の流れ』や『気の滞り』など、現代人にはあまり理解できない言葉を良く口にします。『気』を理解していない方々にいきなり、『気の話』をすると、宗教的な感じを与え、あるいは不信感を与える原因になり、昨今、鍼灸治療が普及しない原因の一つと考えられます。

 現代医学にインフォームドコンセントと言う言葉があるように、鍼灸治療家の方々も、一般の人々にもご理解できる言葉を使うべきであり、治療効果にも影響されると考えます。

 前述の不要代謝産物の話に戻りますが、この『代謝産物』が東洋医学では、『気』に相当します。『気』については、当院のブログ『気とは?』をご覧下さい

 『気』は、現代医学での血液から造られます。解かりやすくご説明すると、血液の中には『酸素』と『二酸化炭素』が溶け込んでいて、肺で取り込まれる酸素は『身体に良い気(代謝物)』、肺から排出する二酸化炭素は『身体に悪い気(不要代謝産物)』になります。

 この不要代謝産物の滞りが、東洋医学での『気の滞り』に相当し、血液やリンパ液の流れ、身体の中の臓器の働きの抑制などを招きます。

 鍼灸治療では、このような不要代謝産物を、鍼(ハリ)やお灸で、血管を拡張させたり、痛みや熱さを脳など身体に刺激を与え、自律神経(交感神経・副交感神経)に作用して、身体の治癒力を高め、身体を改善させます。

 

ガングリオンの治療効果

  ガングリオンとは、主に関節周辺に発症しやすい良性の腫瘤のデキモノです。

 関節には、関節の間に関節包というものがあり、その中に関節の潤滑液となる滑液により、関節が滑らかに働きます。

現代医学の病理所見では、腫瘤の中は、ゼリー状の滑液が入っています。 原因は、滑液の産生異常ともいわれていますが、実際には、まだよく解かっていないようです。

 東洋医学的診断では、気滞血瘀と考えます。いわゆる、身体の代謝(血液や体液など働き)の衰えによることが原因になります。

 気滞血瘀の日常の原因としては、身体の冷え、打撲や外傷、過労などがあげられます。

当鍼灸治療院では、 

                 『標(ヒョウ)治』として、腫瘤の部分に『鍼(はり)』や『お灸』による治療

      『本(ホン)治』として、身体の冷えや疲労の予防改善を目的とした施術

を行ないます。

 ガングリオンの1回の施術の結果による

『治療前』 と 『治療後(6日後)』の画像を、

当治療院のホームページのトップページの【治療効果(画面の上の右端)】に掲載しています。

 この病気は、再発が多いということのようですが、『本(ホン)』とする冷えや疲労などの日常的な原因の改善が、再発予防につながると考えます。